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青春学園
小さな俺達(越前目線)

 「越前君、これ、お願いね」

越「……また来た」


一週間に一度の図書当番。
決まって現れるこいつは、同じ学年の名字名前。


 「嫌そうな顔してぇー」

越「別に、してない」


差し出された本の表紙は、見るからに恋愛もので、思わず顔が引き攣った。


 「これ返却だからね!」

越「わかってる。
  また借りるならさ、早めにしてよね」

 「はいはーいっ」


まったく、こいつが来るまではこの時間は俺の昼寝タイムだったのに。

そんなことを知らない名字は、呑気に本を選び始めてる。

その動きと伴って揺れる名字の髪は、まるで催眠術。

あ、だめ……
………眠…


ドサドサッ
バターンッ


 「いったぁー」


突然の大きな物音に、眠気もすっかり覚めた。

なんとなく予想できる物音の正体に目をやれば、案の定、本の下敷きになっているあいつ。


越「ったく、何してんのさ…」


ため息と共に独り言が零れた。


 「いてててて………」

越「あんたって本当ドジ」

 「ひどっ」

越「ん」


差し出した俺の手を掴む名字の顔は、恥ずかしさからか、赤く染まっていた。


越「仕事、増えたんだけど」

 「う゛っ…
  手伝います……」

越「当たり前」


呆れて落とした目線の先に、またもや恋愛丸出しの表紙が目に映った。


越「またこんなの借りるの?」

 「うん、だめかな?」

越「いや、全然いんだけど」


何気なくパラパラと本に目を通してみれば、目が腐りそうなほどくさい台詞が並べられていた。


 「越前君も読んでみたら?
  面白いよ、それ。短いしね」

越「何、読んだことあるの?」

 「うん、5回くらい」

越「そんな暇あったら
  勉強したほうがいいよ」


勧められたその本で、名字の頭を軽く叩いた。


 「読むんだ…」

越「あんたが読めって言った」


ぱたん。


「読まなきゃよかった」


内容はこの世にんな奴いるかっつーのってくらい優しい男との恋の話し。

小説というには文字が少ないそれに、名字はどうしてあんなに夢中になれるのか。


 「越前君っ、終わったよ!
  あ、読んだ?」

越「うん、まぁ一応だけ」

 「かぁーっこいいよね!
  その男の子」


遮られた言葉を特に気にせず、名字の貸し出しカードを埋めていく。


 「優しいし、頭いいし
  スポーツマンだし……」

越「はいはい」


名字のマシンガントークに付き合う気なんてさらさら無い。
早めに会話を終わらせようと、適当な相槌をうつ。


 「それに背、高いし!」


背……?

なんだ、それ。
背が高かったらかっこいいのか。


 「……あのさっ」


目を合わさずに、言葉を続けた。


越「…今度…からは……
  高いとこの本
  俺が……取るから」


優しさは、本を取ってあげるのでいいだろ?
頭は元から悪くない。
スポーツだって、たいていは出来る。


 「越前君とあたしって…
  あまり身長変わらないけど」

越「大きくなるから!
  …あんたの……名前の為に」


あとは身長だけ。
そしたらほら、君の理想。




(見てろよ、すぐに170越え!!)


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