今日もチロちゃんは恋をする。
待つ人
チロちゃん、
口の中で、転がすように、誰にも聞こえないように呼んでみる。
その背中に。
「チロちゃん、」
どうせ気付かないんだろうけど。
そう思ってたのに、
3度目の呼びかけに、
体育の授業中だったチロちゃんが、
不意に、
此方を見上げた。
慌てて、顔を黒板に向ける。
先生の書く公式がさっぱり入ってこない。
教室のざわめきが聞こえないくらいに心臓が叩いて、
顔が熱くて、
僕は必死にノートを取った。
ほんとは、確かめたい。
見てるかな、
僕を、
ちゃんと見てるかな?
チロちゃんが見てるのはちゃんと僕かな?
チロちゃん、
チロちゃん、
チロちゃん、
ぎゅう、と目を瞑ると、チャイムがなった。
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