準備室のドアを開けたとたんに、流れ出した煙りの籠もった空気に、朝香は顔をしかめた。
ソファーに寝っころがりながら、宇野が片手を上げた。
「窓を開けて吸えよ。」
小言を言いながら中に入る。
窓を開けつつ灰皿に視線をやると、昨日きちんと捨てたにもかかわらず既に、吸い殻が山になっている。
「まじで吸いすぎ、」
肩に掛けていた鞄を書類でグチャグチャの机に置くと、朝香はその中に手を突っ込んだ。
ごそごそと手で探る。
昨日買った飴があるはずだ。
「珈琲淹れて、」
「ちょっと待ってろ。」
すっかり世話役が板についてきたね。
と宇野が笑う。
朝香は顔をしかめた。
「ほらよ、」
ちょうど煙草をもみ消した宇野に、取り出した飴の袋をほおり投げる。
「えっと!何?」
慌てて上体を起こすと、宇野はそれをキャッチした。
宇野は涼しげな青と緑のパッケージをしげしげと見詰める。
「薄荷キャンディ?」
「それでも舐めて本数減らせよ。」
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