「あ、の」
自販機の前、チロちゃんが思わぬ自分に呼び止められたのは、あの消しゴムの一件から、きっちり、一週間後だった。
少々、面食らいながら、チロちゃんは自販機からジュースをとりだす。
「何?」
「や、あの、一週間、位前、かな」
「うん?」
「ぃ、や、やっぱりいいよ。ごめん。」
長いまつげを伏せると何を思ったのか草間は、頭を軽くふった。
ごめんと言いながら、背を向けて歩き出そうとした草間に、チロちゃんは声を掛けた。
「消しゴムの事?」
「えっあ、」
振り返った草間の顔に狼狽の色を見てとったチロちゃんは、内心ひどく驚いていた。
(表情のある顔なんて初めて見た)
「浅賀、浅賀結斗だよ。アイツの名前。」
足早に寄って行くと、チロちゃんは草間の横に並ぶ。
(どうにかなるのなら、どうにかしたいし、力になりたい。)
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