恋の話 消しゴム 草間楓は、そっと顔を上げた。 (子供みたいな事を怒られた…) 羞恥で伏せた顔がまだ熱い。 顔を巡らせて、先程の人物を追えば、親しげに笑いあう3人組の中に見知った顔を見つけた。 同じ学部でも、自分とそう成績のかわらぬ目立つ彼を、周りに疎い草間でさえ、認識している。 (えっとオガワ、だったはず…) 談笑しながら消えた3人に、草間は握り締めた消しゴムを見詰めた。 あんなふうに自分に言ってくれる人など、初めてかも知れない。 そう思うと、心があったかくなった気がした。 (こんな感情、久しぶりだ。) 草間はそっと筆箱に消しゴムを直すと、予備で持ち歩いている消しゴムを取り出した。 (また、会えるといいな。) [*←][→#] [戻る] |