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チロちゃんは叶わない恋をしている。
震える拳


言っておく。
僕は、断じて、断じて、チロちゃんの邪魔をしたい訳じゃない。
そりゃ、チロちゃんの恋が叶うなんて、チロちゃんが誰かのものになるなんて、嫌に決まってる。
だけど、邪魔しようなんて、そんなの思った事はない。
ただ、上手くいかないように、願うだけ。



ガツンとやってきた衝撃によろめいて、のろのろと頬に手をやった。

僕を殴ったチロちゃんは俯いて、握った拳は震えている。
痛いというか、熱い。


「なんで」


呟やいた声は震えていた。

そんなの僕が聞きたい。
僕のカバンから落ちた封筒をたまたまチロちゃんが拾ったのだ。
ピンクで、彼女の名前の入った、返事まってます。とわざわざ面にメッセージいりの。
嗚呼、チロちゃんが僕に怒ってる。
なんだか嬉しくて、でもそれどころじゃなくて、教室をふらふらと出て行くチロちゃんを見送るしか出来なかった。






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