チロちゃんは叶わない恋をしている。
チロちゃんの恋
「小川だ」
不意に掛けられた声に、思わず振り向きそうになる。
ぐっとこらえて、視線を友人に向ける。
「なんか、すっげー見てる、気がしないでもない」
「なんだそれ。次うちのチームの番」
「え、もう?面倒ー」
チロちゃんは叶わない恋をしている。
きっと今日も。
それがいい。
明確な答えなど、チロちゃんには似合わない。
願わくば、チロちゃんの見詰める先に、その視線に熱が込められていて、僕に向けばいい。
今度はチロちゃんが僕に叶わない恋をすればいい。
君が歩み寄ってきた暁には、僕がドロドロに溶かして、構築してあげるから。
チロちゃんは恋をしている。
届きそうな恋を。
end
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