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小説
守ってやるからT/金ヅラ子
新宿歌舞伎町。そこは怪しげな歓楽街の立ち並ぶ、おそらく、日本で一番危険な町。

 

 派手なネオンの光が遮られた暗い路地裏を、一人の女が歩いていた。長く艶やかな漆黒の髪、意志の強そうな黒い瞳、

見る者を惑わせるような紅い唇。それだけでも、十分美しいのに、彼女のまとう着物が、彼女の美しさを一層、引き立てていた。

 

 ふと、前方が、陰った。ハッと顔を上げると、柄の悪そうな男達が彼女の前に立ちふさがっていた。

 「どけ。」彼女は外見にそぐわぬ低い声で、冷たく言い放った。

 「ソレは無いだろ、お姉ちゃんよォ。ちょっとだけオレ達の相手してくれよ。」

 「急いでいる。邪魔だ。」

 そう言って通り抜けようとした彼女の腕を先程彼女に喋りかけた男が?んだ。

 「離せっ!」

 「此処を通るなんざ、オレ達に襲って欲しいって言ってるようなもんだぜ?」

 男のその言葉を合図に、男達は、一斉に彼女に襲い掛かった。

 「やめ・・・ッ!」

 背中が固いコンクリートの壁にぶつかるのを感じながら、彼女は必死に抵抗した。

しかし、彼等は、いともたやすく彼女の腕を後ろ手にひねり、屈服させた。

 「どうせ、仕事で似たようなことやってんじゃん?何で抵抗すんだよ、ヅラ子さんよォ。」

 「何故、それを・・・っ!?」

 「そりゃ、此処の連中なら誰だって知ってるぜ?スナック『攘夷党』のNo1ホステス、ヅラ子のことなんてよォ。」

 「・・・くっ!」

 自分の顎を持ち上げて口付けしようとする男の胸をヅラ子は必死になって押し返した。しかし、無理矢理顎を?まれる。

 「や・・・っ!」



 その時―。

 「ギャァァァァァッ!!!」

 ヅラ子に襲い掛かっていた男に一人が断末魔の叫びを上げて倒れた。

 「何っ!?」

 ヅラ子の顎に手を掛けながら振り向いた男を、誰かが殴りつけ、気絶させる。ヅラ子は、足から力が抜け、へなへなと地面にしゃがみこんだ。

 「何だ、テメェ!?」

 気絶した二人の仲間を見下ろしながら男達が怒鳴った先には、一人の男の姿があった。暗くて、顔は良く見えなかったが、

 彼の声を聞いてヅラ子は、ほっと安堵の溜息を漏らした。

 「オレの女に手ェ出すんじゃねーよ。」

 男達は、その言葉に込められた殺気を感じ取り、蒼褪めた。

 「クソッ、覚えてろ!」

 気絶した二人の仲間を引きずりながら、男達が去ると、彼は、肩を激しく震わせながら地面にしゃがみこむヅラ子に近づき、手を差し伸べた。

 「ヅラ子・・・。」

 その優しくて暖かい手をヅラ子が取ると、彼は彼女を優しく立たせて、強く抱き締めた。

 「金時・・・。」

 ヅラ子は、安堵の息を吐きながら金時の首に腕を回して抱きついた。金時は未だ、体の震えが止まらないヅラ子を抱く腕に力を込めた。

 「怖かったな・・・。」

 ヅラ子は金時にしがみついたまま、無言でコクリと頷いた。

 「でもな、ヅラ子。わざわざ自分から危険なところに飛び込むなんざ、命がいくつあっても足りねーぞ。」

 「すまない・・・。」消え入りそうな声で詫びるヅラこの髪を撫でながら金時は続けた。

 「お前、もっと自分を大事にしろよ。・・・オレは、もう・・・あんな思いはしたくはねーからよ・・・。」

 その言葉が何を指し、金時が何を思っているのかがヅラ子には痛いほど分かった。



 そう・・・。あれは、今から十数年前のこと・・・。日本には、たくさんの外国人が移住してきて、政治の実権を握っていた・・・。



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あきゅろす。
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