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小説
雪のツバサ/銀桂
雪のちらつく大通りを銀時は一人で歩いていた。
時折吹き抜ける風は、ひどく冷たい。羽織とマフラーだけで寒さを凌ぐなんて、無謀な考えだったのかもしれない。
銀時は、どんよりと曇った空を見上げた。
今、同じこの冬空の下にいるアイツは、一体どうしているのだろう・・・?そう思いながら。

桂と最後に顔を合わせたのは、もう数ヶ月も前のこと。
紅桜の一件以来、顔を合わせる度に高杉のことを悔やんでばかりいる桂に腹を立て、喧嘩になってから、なんとなく気後れがして彼に会うのを避けていたのだった。

「会いてーなァ・・・」
そう呟く銀時の前で、見慣れた黒髪が北風に揺れた。



桂は一人、道中に佇み、雪を降らす冬空を見上げていた。
時折吹き抜ける風が身に染みる。この真冬に身に纏っているのが着物だけというのは無茶なことだったのだろうか。
不意に桂は数ヶ月前に喧嘩して以来、一度も顔を合わせたことの無い恋人のことを想った。
「銀時・・・」
何故、急に彼のことを想ってしまったのだろうと考え巡らせて見ると、銀時の髪が雪のように白かったことを思い出した。
会いたい、と思う。会って、許してもらえるとは思わない。だけど、会いたい。それ程に・・・。
「好き、なんだ・・・」
寒さに耐え切れなくなって、桂は雪のこんもり積もった地面へと崩れ落ちる・・・。
が、そんな桂を背後からふわりと掬い上げる腕があった。

「・・・!?」
驚いて背後を振り返った桂の目が、大きく見開かれる。
「銀、時・・・っ」
銀時は何も言わず、桂を抱き締める。その体は、ひどく冷たい。

「ごめん・・・」
桂の頭を優しく撫でながら銀時は言った。
「オレが、悪かった・・・」
そんな銀時の言葉に首を横に振って、桂は彼の背に腕を回す。
銀時は桂に触れるだけのキスをした。桂の唇は氷のように冷たい。自然と、抱き締める腕の力が強くなる。

「銀時・・・」
銀時の腕の中で桂は目を閉じる。彼の温もりが、愛しかった・・・。


〈あとがき〉
原作では紅桜編は冬の出来事だったので、その数ヵ月後と考えてくだされば嬉しいです。
3thED「雪のツバサ」の歌詞に忠実に書いたつもりです。もう現実では桜が舞っているのに、寒々しくてすみません。 (2008.3.29 UP)



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あきゅろす。
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