小説
秋空蒼爽/銀桂
ごろん、と土手に寝そべる。目の前に広がるのは、爽やかな蒼い空。あの頃と同じ、蒼い、蒼い空―。
「なァ、ヅラ。」
土手に寝そべりながら、銀時は、隣で腰を下ろす桂に声をかけた。
「なんだ?」
「空、見てみろよ。」
桂は、言われるまま空を見るが、また銀時へと視線を戻した。
「空がどうした。」
「ったく、ロマンのねー奴だな、ヅラは。」
そう言って、わざとらしくため息をつくと、銀時は、ぐぃっと桂の腕を掴んで地面へ引き倒す。
「何をするっ!貴様!」
突然引き倒されて、驚き喚く桂を仰向けにさせ、自分に引き寄せながら、銀時は言った。
「ほら、空見てみろよ。」
「だから、それがどうした!?」
未だ喚くのをやめない桂の唇を、自分の唇で軽く封じてから、銀時は言った。
「あの頃と全く変わってねェ、同じ空じゃねーか。」
それを聞いて、桂も大人しく蒼い秋空を見上げる。
「そうだな・・・。」
「ヅラァ。」銀時は空を見上げながら言った。
「オレ達の生きる時代は、まるっきり変わっちまったが、あの空は、あの頃と同じ蒼いままだよなァ。」
「そうだな・・・。あの空だけが、昔も今も変わらんな。」
「空だけじゃねーよ。」銀時は桂に顔を向けた。「オレとお前の関係もだろ。」
「・・・どういう意味だ?」
「すっとぼけてんじゃねーよ。」桂の頬に手を当てると、銀時は、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「オレは、あの頃から、ずっと、お前が好きだぜ。」
銀時の言葉を聞いて、桂は薄く頬を赤く染め、自分の頬を撫でる銀時の手に自分の手を重ねながら言った。
「・・・俺もだ・・・。」
銀時は満足げに笑うと、桂を抱き締めた。銀時の背に手を回しながら、桂は静かに目を閉じた。
あの頃と同じ、蒼い空の下で―。
あの頃から、ずっと、変わらない想いを抱く二人の唇が、そっと、重なった。
〈あとがき〉
初めてまともに書いた銀桂です。なんとなく、高桂は、雨、月、土桂は、蝶、夢がテーマになっているので(今のところ)、
銀桂は、空でいこうと思いました。
この作品のネタを思いついたのは、秋空を見上げながら歩いていた、つい最近。11月だというのに、蒼蒼としていて、
本当に見ていて気持ちが良かった。
ちなみに、「爽やか」というのは秋に使う言葉らしいですよ。
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