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小説
有明之月/高桂
 夜中まで、止む気配を見せずに降り続いた霧雨は、空が白み始めると共に、段々と止んでいった。

外の風景の変化に気付いたのか、高杉は布団からゆっくりと体を起こした。
彼の隣では、桂がすやすやと安らかな寝息を立てている。
そんな桂を見て、高杉はフッと表情を和らげ、優しく桂の髪を撫でた。

彼に触れる度に、いつまでも彼の傍にいたいという思いが募る。だが、それでは、いけない。

高杉は、自分の中の何かを振り払うように、桂の髪から手を離し、静かに、桂を起こさないように、立ち上がろうとした。
が…、いつの間にか、桂の手が高杉の乱れた着物の裾を掴んでいた。

「た…かす…ぎ…。」
 桂の口から声が漏れる。どうやら本人は無意識なのだろう。

「いやだ…。いくな…。」

「ヅラ…。」

高杉は再び布団に腰を下ろしながら桂の髪へと手を伸ばした。

「オレだって、お前を離したくねェよ…。」

高杉の手が髪を滑って頬へと下りる。

「だが…、オレがこれ以上お前の傍にいたら、お前は戦が終わっても、また命の危険を感じながら生きなきゃなんねェ。
 オレは、お前の人生を壊したくねェよ…。」

高杉のその言葉が聞こえたのか、彼の着物の裾を掴んでいた桂の手の力が緩んだ。
高杉は眠り続ける桂に屈み込み、その細い身体を軽く抱きしめた。

「好きだぜ、ヅラ…。」

高杉のその言葉は口付けとなって桂の唇へと落ちた。



後ろ髪を引かれながらも部屋を後にする高杉を西へ傾きかけた有明の月が弱々しく、その姿を照らしていた。



〈あとがき〉

「霧雨霞月」直後の話です。
高杉がどんな思いで桂の元を去ったのか、を書きました。
高杉は桂のことだけ考えていればいいと思います(笑。     



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