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win or lose?

 
 深夜0時、工藤新一はあるビルの屋上にいた。
 少し離れた別のビルでは、サーチライトが何かを探すように星空に向けて懸命に首を振っている。
 離れているが、パトカーのサイレンがうるさいほど鳴っているのが聞こえる。
 そのことに、だいぶ近所迷惑だなと考えつつ僅かに身震いした。
 今は夏の暑さが残る9月中旬、だが暦の上ではもう秋なのだ。夜は若干寒い。
 なので、主治医には夜の外出時は必ず上着を着ろと言われたが。新一は、大丈夫だと言って断ろうとしたところ、ひと睨みされて、渋々黒い薄手のコートを着てきた。
 着てきてよかったなと心の中で小さな科学者に感謝する。
 0時を1分ほど過ぎ、サーチライトが揺れている方に顔を向け、白い影が見えない事に満足そうに秀麗な顔に笑みを浮かべた。
 待つこと10分弱。
 いいかげん暇になってきた新一は、フェンスに体を預け星空を眺めていた。
 「御機嫌よう、名探偵。
 「おう、機嫌はいいぞ。」
 突然頭上から降ってきた声に驚きもせず、振り返りながら答えた。
 そこには、白い衣装に焦げ跡をつくり、どこか疲れたような顔をした怪盗がフェンスの上に素晴らしいバランス感覚で立っていた。
 「まさか展示室に入った途端に炎に焼かれるなんて思いませんでしたよ。何時も無茶な方だとは思っていましたけど、今回はやりすぎなのでは?」
 「死なない程度の火力にしたから大丈夫だっただろ?それにお前なら煮えたぎる火山の中に放り込んでも生きてそうだからな。」
 新一は、機嫌よさ気に笑う。
 一方キッドは小さく怪盗を何だと思ってんだと呟いた。
 「それよりキッド、今日は俺の勝ちだな。」
 「・・・・そうですね。ここは素直に負けを認めましょう。おめでとうございます、名探偵。」
 怪盗はやるせない顔で溜息をついた。 
 というのも、この勝負は以前今のように顔を付き合わせた時に、どちらのほうが優っているか。という話になり前に怪盗がコナンに、探偵は批評家と言ったことを根に持っていたらしく、負けず嫌いな名探偵から持ち掛けた勝負だった。
 中継地点に指定した時間内に、怪盗が来たら新一の負け。逆に、怪盗が時間内に来れなければ、新一の勝ちになるという訳だ。
 怪盗キッド捕獲にはあまり積極的でなっかた新一が本気で乗り出してくるので、怪盗は、以前のような軽い気持ちいけなくなった。
 だが、怪盗もそのスリルを楽しんでいるので、文句は言えないだろう。
 「前から聞こうと思っていたのですが、こんな無茶ばかりしていて、中森警部に何も言われないのですか?」
 「あー、言われたけど説得したらOKもらえたぜ。」
 それにしてもあの人、キッドばかだよなあとひとりごちる新一を横目に
 「ちなみにどのように説得したのですか?あの方がそう簡単に名探偵の意見を取り入れるようには、思えないのですが。」
 中森がどれくらい頑固者だということは、新一よりも知っている。
 「説得って言っても一言だけ『キッドはこんなことでは死にません。』って言っただけだぜ?まさか俺もここまできくとは思ってなかったかどな。」
 ・・・・説得力がありすぎる。
 今までの怪盗の行いを思えば、そう思われても不思議ではないだろう。
 だがキッドは泣きそうになった。
 みんな怪盗を何だとおm「おいキッド。」
 上を向いて涙を溜め、この世の無情を嘆いていた怪盗を新一が現実に戻す。
 「早く獲物返せ。明日試験あるから、早く帰って寝てーんだよ。それとも何か?俺を寝不足にして今でもヤベー授業日数を減らそうとしてんのか?俺に遅刻してほしいのかよ。」
 新一の機嫌は、怪盗が現実逃避している間に降下したようだ。
 怪盗は本日二度目の溜め息をつき、フェンスから降り名残惜しげに今さっき拝借した大粒のガーネットを新一に差し出した。
 新一は、訝しげに怪盗を見る。
 いつもは、放って寄こすのに、なぜ今日は手渡しなのだろうか。
 そんな新一の様子を数歩離れた場所で手にガーネットを持ち、シニカルな笑みを貼りつけて見ていた。
 少し躊躇したが、別段気にすることなく新一は一歩一歩怪盗に近づいていった。
 そして、手がガーネットに触れた瞬間、その手を取り、腰に腕を回され、額に口付けられた。
 新一は、一瞬思考が停止し、次の瞬間超高校生級と謳われる右足を繰り出した。
 「こんのっ!・・・変態!不審者!バ怪盗!!!!」
 そんな新一の蹴りを見事に避け、尚且つ華麗にもといたフェンスの上にヒラリと飛び乗った。
 「勝負は負けてばかりだとつまらないでしょう?色々な意味で。それに今のは、ほんのお休みの挨拶ですよ。よく眠れるように、と。」
 小さく笑いながら、顔を真っ赤にし、口をパクパクしている新一を見、
 「では、名探偵の睡眠時間を削ってしまったお詫びに、また近いうちに予告状を送らせていただきます。あと、次に会ったら他の挨拶もしてあげますよv」
 語尾にハートマークをつけて怪盗は、フェンスを蹴った。
 「いらねーよ!!次に会ったら絶対にテメーを監獄へぶち込んでやるッ!!!」
 新一の怒鳴り声を背中で聞き、苦笑しながら怪盗は、ハングライダーで飛び去っていった。
 

 翌朝、工藤邸前で世間を騒がせる名探偵がえらく慌てた様子で学校へ走っていく姿が目撃されたそうだ。
 
 
“END”〜あとがき〜
いやあー
初の小説がこんなんになるなんて思いもしませんでした;
今回は快斗でも新一でもない視点で書いてみました。
次回からはどっちかの視点に固定して書いてみたいとおもいます。

最後になりましたが
こんな幼稚な文を読んでくださった皆さんに心から感謝します!!
ありがとうございました!



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あきゅろす。
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