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 一度、小さく深呼吸する。
 手紙に書いてあった言葉を思い出し、呟いた。その際、在る物を思い浮かべる。


『本』


 その言葉に応えるかの様に、肩に刻まれた文字が光り剥がれるように宙に現れる。
 それが、目の前で形を変えた。


『素晴らしい』


 具現化したそれを掴み、一通り眺め、感嘆する。
 細部まで確りと思い描いた物だった。

 表紙も中身も真っ白な本である。
 表紙を開くと裏に説明が書いてある。

・これは魔法の本です。

・世界を創る事ができます。

・世界は貴方の物です。

・世界に存在させた物も貴方の物です。

・物に関わる全ての事は貴方次第です。

・世界は魔法の本を開くと共に始める事ができ、閉じると共に終わらせる事ができます。

・世界は貴方が終わった場合も終わってしまいます。

・始めの内は余り望み過ぎては上手くいきません。

・世界は不安定なのです。

・此れのルールは予告なく削除、追加、変更される場合があります。いつでも離さず持ち、こまめに確認するようにして下さい。



 読んでも訳が分からない。
 とはいえ、今は必要無い。


 手紙に指示があったのだ。だから、本は開いたまま、その指示に従う事にした。


『鴻』


 そう言って振り返れば、彼女は素手で“始”を吹き飛ばしていた。


「琳、伏せっ!」

『へほっ?』


 すかさず飛ばされた指示に従い、屈めば、鴻が私の方へ跳び、その直ぐ後、頭の上で打撃音が鳴った。

 返り見て、着地した鴻と飛んでいく“始”が見えたことから、私へ飛び掛かってきた“始”を鴻が蹴飛ばしたのだと分かった。


 …凄い。


 そう思わずにはいられない。
 しかし、“始”は殴る蹴るくらいではどうにもならない。その為、いくら吹き飛ばしたところで、四面楚歌には変わり無かった。



 

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あきゅろす。
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