◆織姫彦星
カラカラ。
カラカラ。
回る。廻る。
暮れ行く陽。
来る夏の夜。
陰りを帯びた草原。
橙色を帯びた草花。
涼しげな風が夜の始まりを告げる。
消えかけていく蝉時雨が一つの時間の終わりを感じさせる。
カラカラ。
カラカラ。
回る。廻る。
暮れ行く陽の鮮やかな橙色に照らされた大きな風車が、草原に囲まれた小高い丘の上で、ひっそりと円筒型の建物の上で寂しげに回っていた。
カサリ。
小さな音が鳴る。
ふぁ〜あ。
小さな声が鳴る。
『久しぶり、っと』
小屋の入口の前の段差に一人の少年が腰をおろした。
上を振り向くと寂れた風車がゆっくりと回っていた。
クスリ。
笑ってしまう。
何も変わってない。
何も変わらない。
暮れ行く陽も。
見渡す草花も。
回る風車も。
変わらない。
変わってない。
変わってしまったのは…
『……元気かな、アイツ』
そっと瞳を閉じた。
涼しげな風が凪ぐ。
橙色に染められた髪が揺れた。
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