学園伏魔殿 3 『鴻……はああぁぁ…』 琳はその名前に大きく溜め息を吐いた。 そのまま、ベッドの横で囁く様に鳴り続ける携帯電話をただ見下ろしていた。 最近街の本屋で聞いて何となく気に入って設定した曲が、何度も同じフレーズを繰り返している。 …“フールシーズンズ”だっけ。 珍しく覚えたバンド名が曲に釣られて頭に浮かんだ。それぞれ名前くらいしか分からないので、それ以上が浮かぶ事はなかった。 その間も曲は鳴り続けていた。 『…しつこい』 携帯電話のサブディスプレイはまだ同じ名前をスクロールさせいる。 いつまでも着信音が鳴ると言うことは、メールではなく、電話の方なのだろう。 『…面倒臭いなぁ…』 また身体中の空気を全て吐き出すかの様な溜め息を吐いた。 そうして、だらけきった様な遅々とした動きで携帯電話に手を伸ばした。 『うあぁ…』 手に取った携帯電話を開いて、ボタンを押して耳に当てた。 「琳っ!!!遅ーーいっ!!!」 それも束の間、余りに甲高い声に琳は携帯電話を離した。 静かになった所で、再び近づけ、口を開く。 『…誰…?』 「ウチ!ウチだよ!アンタの友達!」 『私、友達いないし、詐欺とかもいらないから、じゃ』 「こらあっ!切らないで、鴻、椋月鴻だから、ていうか、友達でしょ!酷くない?」 『五月蝿い』 「…ごめん」 『それで、何?』 一通り、最早通例となった遣り取りを交わして、琳は本題を尋ねた。 正直な所、本題等に興味は無い。この毎回恒例みたくなっている遣り取りも面倒臭い。けど、鴻は一応友人の様なものと思ってはいるので、話は聞く。 それが礼儀だと思う。 「凄いの見つけたの!」 『さよなら』 だが、琳は電話を切った。 時には突き放すのも必要だと思う。 その時が琳には多すぎるのだが、本人には自覚が無かった。 或いは自覚していて、気にしていないだけなのかもしれない。 数秒後、電話はまた鳴り始めた。 [*前へ][次へ#] |