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「あ、オレの方こそ、よろしく」
途切れがちにツナさんも同じく頭を下げ、長身の人が宜しく!と笑顔を浮かべた。
獄寺さんは最早相手にされていなかった。
「初めまして……えっと…」
ボクにでは無いかもしれないけど、宜しくと言われたので、長身の人に挨拶をするも、名前が分からず、尻すぼみになってしまった。
視線だけ長身の人に向けると、ツナさんがボクの視線を追う。
「山本だよ、心葉」
そして、笑んで長身の人の名前を教えてくれた。胸の奥に温かい物が広がっていく様な感覚を覚えた。それが何かは分からない。
『宜しくお願いします、山本さん』
「宜しくな、あ…っと、心葉ちゃん」
「けっ、こいつなんて野球バカで十分だ」
改めて挨拶をすれば、獄寺さんが腕組みして遠くを向いた。
いつも機嫌が悪い人だなあ、と思う。ところで、獄寺さんが此方を向くととても明るくて元気な玲がボクの後ろに隠れるのは何でなのだろう。
この時間、ツナさん達と昼食を食べたのだが、隠れては出て、出ては隠れてを繰り返す彼女は不思議でならない。
「獄寺、お前少しは後輩に優しくしろよ、怖がられてるぞ」
「んなっ!俺は何もしてねー!」
「獄寺くん、多分それが…」
「お前も一々隠れんじゃねー」
「す、すみませんーっ」
「落ち着けって」
そんな会話を眺めながらボクは卵焼きを口にしていると、ツナさんに、うるさくてごめん、と謝られた。
『いえ、皆楽しそうで、良いですよ』
「そうかなー」
卵焼きを咀嚼し終え、言えば、複雑な表情を浮かべてツナさんは小さく笑んだ。
きっと、ツナさんも楽しいんじゃないかなと思う。
「明日も皆で食おーぜ」
山本さんの快活な声に送られボクと玲は屋上を後にした。
「獄寺さんって怖いね」
少し元気が欠けたような調子の玲の言葉が印象的で、口許が緩むのを感じた。
それがどうしてかはやはり分からないけど、出来るなら明日も此処でお昼を取ろうと思った。
これが団欒?
屋上を出れば、数人の女子生徒に囲まれたが、これは何故だろう。
♯はじめまして♯―END―
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