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 防具を着けた人の前に来ると、綱吉さんは大きな溜め息を吐いたみたく俯いた。

 心無しか脚が着いた板の横の集団も皆疲れたとばかりに項垂れている気がする。

 元気にはしゃいでいるのは獄寺さんだけだ。

 横にも縦にも大きく距離が離れた私のいる所まで、十代目っ!、という声が聞こえてくる。

 獄寺さんは何時でも元気だ。
 そう言えば、今朝も玄関から出るや否や、


「十代目に何もしてねーだろうな!」


と、大きく胸を張った体勢で見下ろす様に睨まれ、叫ばれた。

 きっと、綱吉さんが大事なんだと思う。よく分からないけど。



 回想に浸っている内に、四角形の中心にいる人が綱吉さんへ小さな物を投げた。
 綱吉さんが棒を思い切り振る。


 けど、それは綱吉さんの頭に当たって、綱吉さんはその場に倒れた。


 獄寺さんと長身の男子が慌てながら綱吉さんへ駆け寄り、倒れた綱吉さんの肩を揺さぶり、十代目、十代目と叫ぶ。

 それも束の間、獄寺さんは綱吉さんの肩から手を離すと、大地を噛み締める様に、ゆっくり、重々しく、四角形の中心へと歩み寄る。

 先程何かを投げた男子が、その光景に、腰を引く様にその場に崩れ落ちた。

 獄寺さんがその男子の首許を掴み、顔を近付け、何かを叫び始める。
 けど、数回叫んだ所で今度は綱吉さんが叫んだ。


「獄寺君、ストップ!駄目だって!」


 それを聞くや否や、獄寺さんは掴んでいた首許を突き飛ばす様に離し、綱吉さんの方へ銃弾の如き速さで戻り、綱吉さんの前で膝を着いた。
 そして、頭を地に着け、何かを言い続けている。



 そこで、授業の始まりと終わりに鳴る音が鳴って、私は視線を前の先生と呼ばれた人へと戻して、一礼し座った。


 窓の外を見れば、綱吉さん達も終わったみたいで、校舎へと戻っている最中だった。
 獄寺さんはまだ頭を何度も下げている。



 それにしても、綱吉さん達は一体何をしていたのだろう。


 帰ってから聞いてみようと、ボクは密かに思った。



 

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