はじめまして
ボクは中学一年生らしい。
『…あ…その、…小由良心葉です』
多くの視線が虫眼鏡を通した太陽の光の様にボクへと集まっている。
ボクは何かしたのだろうか、と思えば、理由等分かる訳もなく、ただ隣の先生と呼ばれる人に言われるが儘、自己紹介した。
けれど、その自己紹介と言えば名前位しか言える事は無い訳で、矢継ぎ早に問われる事一つ一つに閉口してしまう。
数分して席まで案内されて座ると、やはり此でもかと言う程にあれやこれやと質問をされる。
しかし、どれ一つ取っても答えることが出来ない。
何せ、分からないのだ。
答えが返ってくるならば、自分が問いたい程に、ボクはボク自身の事が分からないのだ。
とはいえ、折角話しかけてくれる人々に何も言えず、困ったような顔をされると、胸の奥が押し潰されそうな感じがして良い気持ちはしなかった。
授業と呼ばれる物が終わる度に、瞳を爛々と輝かせた人々がボクを取り囲む様に集まったけど、何を聞いても答えないボクに困り果て疲れたのか、それも次第に止んでいった。
何だか、胸の辺りを渦巻いていた重りの様な物が取れた気がして、ボクは大きく息を吐いた。
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