3
「その、君は何て呼んで欲しい…のかな…」
言ってみて、ややこしく考えてたのが馬鹿らしく思えた。
…うんうん。そう、こういうことだ。
「…分からない…です」
「んなぁっ!」
呼んで欲しい名前が分からないなんてあるんだろうか。
記憶喪失で色々な事が分からなくて不安定ということなんだろうか。
だとしたら、オレに出来る事は……分からないな。
少し、無力が悔しくなった。
けれど、今はそんなに考え込むような事じゃない気もする。
…というか、呼び名の問題だし。
「あの…」
オレがあれこれ考えていると彼女は、控え目に声を上げた。
オレは彼女へと意識を移す。
何だか困ったような顔をしていた。昨日と同じ無表情にも見えるけど、そんな気がした。
「どうかした?」
「じゅ……ツナ、さん。その…昨日呼んだ通りで良い、ですよ」
「心葉…」
「それで良いです」
「え」
昨日は、ちゃん付けだったんだけど。
「宜しくお願いします」
そう言われてしまうと、もう何も言えない。
「う、うん。宜しく心葉」
なんとなく握手をするために手を伸ばした。
ズガンッ!
その手が伸ばしきらない内に引っ込めて、スローモーションがかかったような動きで音のした方を向いた。
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