貴方は誰?
此処は何処?
ボクは誰?
いや、ボクは、何?
上を見た。
空が在った。
今日は曇り。
言葉はおかしいけれど、一点の曇りもない、曇り。
灰色の空。
下を見た。
地面が在った。
何も無い。
蟻の一匹さえいない。
石ころが一つも無い。
灰色の道路。
横は灰色の塀が在って、灰色の電柱が立っている。
灰色の世界。
其処に何もせずに立っているだけのボクも灰色。
後ろには何も無くて、前からは人が二人。
此方に向かって歩いて来ていた。
『………』
何だろう?
一人が此方へ指をさしたかと思えば、二人は何か慌てているように、此方に向かって駆け足に近付いてきた。
声が聞こえる。
けれど、意識が遠退いていくボクには何を言ってるかは分からず、ボクはただ視界を覆っていく闇に身を任せ、力尽きた。
それが何故かも分からない。
ベッドに横たわる内に眠りに入っていく様な感じで、ふわりと意識は消えていった。
「10代目!多分、コイツっスよ」
「う、うん。でも…」
「どうしたんスかね。急に倒れやがって」
「と、とりあえず家に運ぼうか」
「そうっスね」
ボクは一体、何なのだろう。
暗い世界で、ボクは一人で立っている。
夢はいつだって暗闇の中で、自分の中は空っぽで、何も分からず、朝の光が、夜に終わりを告げる。
閉じた瞼を上げた。
闇が光に替わる。
ボクは何故かベッドの上にいて、上半身を起こして辺りを見回すと見慣れない部屋に、見知らぬ人が三人いた。
「あ…起きた?…良かったぁ」
一人が胸に手を当てて一息ついている。
茶色いボリュームのあるツンツンした髪がやけに印象的だった。
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