7 『…どうしたんですか、これ?』 自分でも驚く程に平坦な呆れ声が口を出た。 なんとなく、先が読めた気がしたのだ。 少し離れた所から鈍い音の応酬が聞こえる。だが、それは無視した。 「しっかし雲雀、言う割りには大したことないわよね!」 無視だ。 「わお、君こそその程度でよく言うね、朝霧もだけど、直ぐにそこで転がる委員達と同じようにしてあげるよ」 聞こえない、聞こえない。 草壁が僅かに身を震わせた。近くでその他大勢が、今にも事切れそうなか細い声で呻いた。知らない、知らない。 『草壁さん?』 答えが返って来ないので、急かすように語調を強め、再度問うと、草壁は僅かに此方に顔を向け、たどたどしく口を開いた。 「実はな、委員の一人が、委員長の居ない間に…クリスマスパーティーをしよう、等と言い始めてな」 草壁の瞳が遠く、星空へと向く。 まるで、今から死に行く負傷兵のような、弱った姿に、どれだけボコられたのだろうと疑問を抱いた。 草壁は続ける。 「…俺は、止めたんだ。しかし、奴は…柏木は聞かなかった」 取り敢えず、ずっと気になっていたんだが、柏木って誰だ。 「もしかしたら、俺自身、クリスマスパーティーというものに憧れていたのかもしれない…。だから、止めきれなかった、のかもしれない。結局、タイミング悪く帰って来た委員長の耳にその話が入って、この様だ」 草壁の言葉は真摯に澄んだ夜気に響いた。 私は、黙って踵を返し、異種格闘技戦に汗を流す二人を見た。それから、言った。 『鴻、帰ろ』 「何」 後ろから鳴った、絶命間近の羽虫のような声を無視して二人へと近寄った。 恭弥が切り裂くような鋭利な視線を寄越す。口が固く結ばれていた。それが直ぐに小さく開かれた。 「朝霧、今夜は返す気は無いよ。椋月も、ね」 「琳と一夜を共に…?じょ、上等じゃない雲雀!!!」 『帰ります』 どこか苛立たしげに告げる恭弥に、私も苛立ちを隠すことなく断言した。 [*前へ][次へ#] |