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「………っ。…邪魔だよ。外が見えない……」


『………すいません』


 邪魔にされた。
 用があったのではなく、寧ろ用が無かったらしい。
 機嫌を損ねるのは見舞いに来た都合、それ以前に望まぬところなので素直に従い鴻の隣へと戻った。

 鴻は目と歯を剥いて今にも恭弥に飛び掛からんばかりに顔を歪めていた。
 溜め息混じりに肩に手を置くとムスッと口を尖らせあらぬ方へと首を向ける。
 随分と感情的な娘だ。

 それにしても、やはり何かを言おうとしていた気がしたのだが気のせいだろうか。

 窓の外へと視線を向けている姿からは何も読み取れない。
 否、早く出ていけ、という意思表示なのだろうから読み取る以前の問題なのかもしれない。


『では、私達は帰ります。ご自愛下さい。何かあれば連絡願います』


 一礼して、少しの間恭弥を見る。
 無言で、やはりこちらを向こうともしない。
 一体何を考えているのだろう。


 私は踵を返した。そして、何も言わず病室を後にする。
 病室を出て数分後、鴻はぶつぶつと何かを言っていたが、耳に入らなかった。

 よく分からないが、先程の間が気になって仕方ない。
 病に伏した人間は誰かを求めてしまうというが、それだろうか。あの委員長に限ってそれはないように思える。だが、案外………んー、どうだろう。

 やはり、想像できない。


 隣を歩く友人(あーだこーだ)のなら容易に想像でき…………ない。
 うん、できない。

 誰かを、等ではなく、そもそも病に伏す姿が、だ。


『(…ま、馬鹿はなんとやらって言うしな)』


 じとり、隣を向く。
 どうしたの?と問われたので、どうもしないと返し、然り気無く繋ごうと企んだだろう鴻の手を叩き落とした。


「琳のケチ…。何も減るわけじゃないのに」

『精神的に減る』

「体重?」

『嫌味?』


 一瞬脳裏を過った体重計の姿を振り払いながら鴻を睨み付ける。
 何て憎々しいんだ体重計、あと同じ物を同じ量食べているというのに全くといって良いほど太らない友人(にこにこ)。

 少しくらい太った方が可愛いなんて言うが、そんな男子の好色染みた言い分等、鬱陶しい以外の何物でもない。
 そもそも男子が鬱陶しい。(例外有り)


「琳ーっ!!!」

『ふぁひあ!?』


 突然、抱き付かれた。
 痛い、力が痛い。


『何するん……ん?』


 何するんだ、と言おうとして、疑問で言葉を濁した。


「んん?」


 鴻も同じことに気付いたのか、抱き付いたまま疑問符を口から溢す。



「だから、これくらい何でもねーって言ってんだろ!!!」

「強がるなって」

「どう見ても重症です」


 前方から見慣れた二人と看護師が言い合いをしながら現れたからである。



 

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あきゅろす。
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