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「この前はごめんね」


 後頭部を撫でながら笑みを溢すマイケルに、いえこちらこそと曖昧に答える。
 マイケルはその答えに首を傾げるが、それもそうだ。日本人特有のお愛想、決まり文句のようなものである。通じる訳もない。例え日本語を話せたとしても、通じないこと等山程あるだろう。


 まあ、今この時、彼に大してはそういう訳でもないが。
 何せ、彼。死んでいても可笑しくは無かったのだから。本来ならば土下座しても足りないくらいだ。それ以前に釣り合うもの等無いとは思う。


「ハハ、本当に悪かったな」

「別にいいわ、倒れるくらいよくあるしね!」


 続くディーノの言葉に鴻がニコリと笑んだ。
 あんたにその資格はない。
 言えば洒落にならない事態になるので、やはり黙するも、申し訳なくて仕方ない。






 ディーノは何か急いでいるようで、それだけ言うと踵を返しどこかというか、綱吉の病室へと向かって行った。

 それに同行したい気持ちは有ったが、私達にも向かう場所があり、用事がある。ということで後は追わず、目的の病室へと足を向けた。

 そこはベッドにテレビ、観葉植物があるくらいの、案外普通で、異様に静かな病室であった。


「君達何しに来たの」


 病室に入るや否や目的の人物、珍しく、似合わず、床に伏した風紀委員長様から険のある声を戴いた。
 嬉しくない。


「来たくて来たんじゃないわよ!」

「なら直ぐにここから出してあげよう」

『二人とも静かにして下さい』


 例に依って喧嘩腰な鴻とそれに相対そうとトンファーを構えた恭弥を制する。鴻は渋々と、恭弥は元々戦る気が無かったのか矛を収めた。
 その様子に、結構風邪は深刻なのかもしれないと思案してしまう。
 戦意を掻き立てられない程に重症ということだろうか。


 私は二人が静まったのを見計らって歩を進めた。


『これ、委員からです』


 言いながら、果物が隙間ない程に詰められたバスケットを窓際に置く。
 厳つい顔したあの委員達が果物なんて、と思いはしたが、まあ見舞い品等限られているし、花よりはそぐわなくないかと、思い直した。


「朝霧…」

『へほ?』


 と、背後から聞こえた声に、肩を殴られたような衝撃を覚え、振り返る。


 何故か恭弥が此方をじっと見詰めていた。

 私、何かしただろうか?




 

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