G ―――鴻と初めて逢った場所だから。 多分、そんな言葉を期待している。 そんな言葉、琳から出る訳無いのに。 案の定、琳は首を捻っている。 執拗に聞かれる意図が分からないのだろう。 自分だって分かってない。 なのに。 「多分、鴻と同じ理由じゃない?」 そんなことを言う。 無愛想に、何の抑揚もなく。 さっきみたく、はにかみでもすれば、飛び切り可愛いのに。 『そっかー。一心同体みたいな?』 ウチは代わりに、表情筋を自在に操り、意地悪な口調で言った。 「は?」 冷たくされた。 …誰か、この娘の取扱説明書を下さい。 『…何でもないよ』 仕方ないので、話を切った。 切らざるを得なかった。 と、その時。 ――カーン。 カーン――。 ――カーン。 カーン――。 鐘の音が鳴った。 鳴る筈の無い鐘が何度も鳴り、ウチと琳に清んだ音が降り注ぐ。 鳴る筈ないのに。 鐘は5年前、新築された教会へ渡り、此処には無い。その筈なのに、ウチの目線の先で、無い筈の鐘は前後に揺れ、鳴り続けている。 琳の目線も其処にあるから、彼女にも見えているのだろう。 そして。 “クフフフフ…” 背後から声が聞こえた。 ♯Side-K♯―END― [*前へ][次へ#] |