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♪絶戦


「琳っ!!どこ行ってたのよ!探したのよ?」



 外に出ると、ずっと待っていたと言わんばかりに顔を輝かせた鴻が走ってきた。

 その眩し過ぎる笑顔に先程のシャマル先生との会話を思い出して胸が締め付けられる。
 身体が強張ってしまう。

 瞬間、がっちり抱き着かれた。風は冷たさを増し、半袖が厳しくなってきている季節とはいえ、やはり暑苦しい。

 鴻はそのまま顔の近くでニヘへと悪戯っ子のような笑みを浮かべて、腕を緩めて私から離れた。


「どうかした?」

『え?』


 かと思えば、心配そうに目を細めて瞳を翳らせる。その様子に胸が痛んだ。変なところで鋭いのだ、この娘。


『何でもないよ』


 私は微かな笑みを浮かべ、鴻の脇を歩いて大きくAとプリントされたビブスを着た一団の方へと向かった。
 鴻は不思議そうに小首を傾げて、直ぐに私の隣に並んだ。


 …今は体育祭に集中しよう。


 痛みは胸の奥にしまって目を背けよう。



 A組の陣地に行くと、綱吉が少しフラつきながら鉢巻きを複雑な表情で見つめていた。


「何、十代目にガンつけてんだ朝霧」


 私はそれを心持ち心配気に見ていると、その隣に居た獄寺に咎められた。
 最早忠誠心を通り越して独占的にも思えるのだが、そんな彼も何だか微笑ましいと思う。


『嗚呼、ごめん。そんなつもりじゃなかった』


 それにぶっきらぼうに答える。それでも獄寺はまだ何か言いたそうだったが、彼が出る種目になったのか、苛立たし気にそっぽを向いた迄にして選手溜まりの方へと行ってしまった。


 その後ろ姿に綱吉が頑張ってと言うのを見て、私もそれに倣って手を振ってみた。
 それに気付いた獄寺は、振り向くと綱吉には満面の笑みを向け、私には眉間に皺を寄せて、直ぐに向き直った。



 …あー、次の次は私の出番だ。

 獄寺の後ろ姿をぼーっと見つめた後、ポケットに入れておいたプログラムを広げて見た。
 いつの間にか進んでいたことに苦笑が込み上げる。
 まるでやる気が湧いてこない。

 だって、さ…。
 障害物二人三脚だし。
 面倒な予感がして堪らない。



 

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