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 やりとりは見たというか、読んだ通り、綱吉が熱で休みたいと申し出、男だからと駄目だとシャマル先生に一蹴されという不憫なものだった。


 シャマル先生の科白一つ一つに先程までのやり取りが薄れていく。
 こんな人に泣かされかけたのか。嘆息せずにいられない。


「オジさんにチューさせてくれ〜っ」


 この人、何で捕まらないのだろうか。
 そう思い、呆れた視線を向ける。


「あれ?朝霧さん?」


『わほ?』


 その時だ。まさかの指命を受け、目を丸くした。
 振り向けば、綱吉が心配そうな視線を向けている。


「もしかして朝霧さんも風邪ひいたの?」


 そのまま気遣うように訊いてきた。その雑じり気のない心配に翳る瞳に心臓が高鳴る。


『え…あ、違う。大丈夫』

「本当に?顔赤いけど」


 顔が赤いのは、主に君と後ろの変態のせいなのだが、どちらも言えない。

 前者なら告白、後者なら…なんだろう。勘違い辺りだろうか、になってしまう。


『あー、さっきまで風紀委員の仕事でバタバタしてたから』


「そっか…なら良いけど」


 私の言うことを信じながらも、案じてくれる彼は本当に優しい子だと思う。
 だからか、嘘を吐いたことに罪悪感を感じてしまう。


 そう言って、綱吉は、無理しないでね、と言い残しこの部屋を後にした。
 恐らく今頃思い人である京子ちゃんに名前の刺繍入りの鉢巻きを渡され朧気ながら体育祭の参加意思を固めているだろう。


 なんとなく、素直な彼が羨ましく思った。
 それは別にさっきまでの会話があったからではない……と思いたい。


 取り敢えず、


「琳ちゃんもあれだけ素直ならなー」


と後ろでニヤニヤしている変態の言ったことを受け入れたいとは思いたくないと感じた。



『私も体育祭あるので行きます、先生』





 このまま居れば、胸の奥に溜まっていたものがまたちらつき始める、そう思い私は保健室を後にした。


 これはきっと逃避だ。


 向かってくる鴻、向き合わない私。
 今はこれ以上考えたくない。


 校外から聞こえる空砲が体育祭の開始を告げる。
 一人歩く廊下で今日は少しはしゃぎたい等と柄にもなく思ってしまった。


 ところで、さっきの空砲、獄寺のダイナマイトではあるまい。
 先程までとは違った不安が過った。


 こっちは楽しいからいいや。


 ♯舌戦♯―END―


 

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あきゅろす。
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