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 一方、パン子とはいうと、私とは違った意味で顔を真っ赤にしている。
 今にも湯気とか出そうだ。

 所謂、蒸しパンだろうか。
 あれ、湯気出るっけ。

 帰りたいたくてしょうがないせいか、喩えが歪み始めているのに憂いを覚える。


「おもろいなー、パン子!ほらほら見て見て琳ちゃん、鴻ちゃん。パン子のはしゃぎっ振り!!
 すっごい楽しそうじゃん!!こんなパン子見るの初めてだよー。オレも真似しちゃうっ!」


 …付いていけない。


 パン子の真似をして両手を振ったり、地団駄を踏んだりととにかく動き回り始めたロンシャンに胃の辺りに重い物を感じた。


『鴻…帰ろ…』


 自分でも驚く程に重苦しい声が出た。
 堪り兼ねて私は二人に背を向け、ファイティングポーズを取っている友人(ぐるる)の袖を掴んで引っ張った。

 鴻は、直ぐに構えを解いて私に従う。
 この子も流石に疲れ始めたんだなとその様子に強く感じる。


「えー、何そのノリ。帰っちゃうのー、もっと遊ぼうよ!」

「ちょっとぉ!逃げないでよぅ!明日覚えてろよぉ!!」


 …言っている事が違い過ぎる。

 背後から全く正反対のオファーが聞こえたが、聞こえない聞こえないと胸内で呟いてその場を後にした。


 後者の科白にピクリと青筋を浮かべた鴻は、無理矢理引っ張って、連れ出した。
 戻ってしまっては、また暫く帰れなくなる。



 いつの間にか藍色に変わっていた空に一つ溜め息を吐いてしみじみと思った。



 …彼はあの風紀委員長の粛清の対象にならないのだろうか。

 あの制服の着こなしが頭に浮かび、疑問が過る。


 会わない方が良かった、なんて思ってはいない。
 きっと、タイミングが悪かったんだ、うん。



 ♯Prince thoughtlessness♯―END―



 

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