02
「お一人様、ですか」
「は、い」
「ではこちらの席に」
二人掛けの席に案内をする。彼女は俺の顔を見て酷く驚いていたが、気にせずメニューを渡す。
「こちらがメニューになります。お決まりになりましたら呼んで下さい」
失礼します、一言そう言いカウンター内に戻る。先程注文された飲み物を作り二人組の女性客に渡し、キッチンへ入った。
「キミくん、食べたい」
「いやいやいや、誤解されそうな言い方するな。しかももう食ってるじゃん。ったく、多目に作って良かったぜ」
口をもぐもぐさせキミくんを見る。汗を拭う姿は格好良い。
俺より10も上なのに、キミくんは女性客から人気だった。でも、客と身内への接し方が全く違うキミくんの素の姿を知る者は少ない。汗を拭う姿が格好良い事を知る者も、きっと少ない。
「さすが、キミくん」
「だろだろ、誉めろ」
「もう一個」
「っだあー!っテメ!俺が作った俺のサンドイッチが…」
端に三つ避けてあったサンドイッチを一つつかみ口に放り込む。意外と大きくて口が閉じない。キミくんは呆れ顔で俺の頭をポンポン叩いた。ゆっくり噛み、飲み込むとお皿を二つ手に取った。「持ってく」
「…おぅ」
カウンターにはコーヒーを飲み談笑する女性。二人の前にサンドイッチを置き、先程入ってきた女性の元へ行く。
「注文、決まりましたか」
「あ、はい。これとこれ、お願いします」
ミニケーキとダージリンティー。彼女はそれを指差しメニューを閉じた。かしこまりました、と声をかけ、メニューを受け取り再びカウンターへ戻る。ダージリンティーを淹れ、もうできているミニケーキをお皿に乗せると彼女に渡した。彼女はありがとうございます、と引きつった笑みを浮かべる。
接客だから文句も何も言わないが、人の顔見てなんなんだその反応。
イラつきを抑えカウンターへ戻りキミくんの隣に座る。
「あの客、ヤダ」
「こら、そういう事言わない。ったくお前は教えた事意外は口悪いのな。おじさん疲れるよ」
「キミくん、むかつく」
「こらこら、それはおかしいデショ。なんで俺がむかつくの」
「説教」
「あ、そういうこと言うのね。俺泣いちゃうよ」
「泣けば」
人付き合いが苦手な俺を拾ってくれた店長に感謝はしてるけどあの客は嫌だ。
そんな事を思っていると店長に頭をポンと叩かれた。
「お客様が来たから行ってくれ」
「…わかった。いらっしゃいませ」
入り口に佇む男の人を案内しようとした。でも、する前に腕を掴まれた。
いつもと変わらない筈の1日が終わりを告げた。
「しの、ぐ?」
「…梓…。キミくん、バトンタッチ」
「あぁ?あんだよ」
「凌、待て!お前、四季はどうしたんだよ!」
「あ゛あぁぁぁぁ!!!!」
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