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04

「あぁ、離してって?嫌だよ。なぁ、ユキナの声が出たのは、俺と居たからじゃない?俺と居て楽しかったとか、落ち着いた、とか思ってくれたからじゃない?」
『しらない』
「…ごめん。なんて言ったかわからないや」

苦笑いする彼に胸が苦しくなった。
でも、と彼は言葉を続ける。

「でもさ、ユキナ。ユキナの声がなんででないのかわからないけど、元々はでたんでしょ」

頷き彼の問いに答える。

「だったらまたでるようになるよ。だからそれまで俺と喋ろう」

彼の言ってることも一理ある。元々は出た声。病院の先生も再び出ると言ってくれた。実際今、出たし。でも、
しゃがみこみ紙にペンで書く。

【それが君と喋る理由にはならない】
「…頑固だなあ。子供じゃないんだからさ、自分から壁つくるのやめたら?疲れるよ」

他の人に言われるとむかつくであろう言葉。彼に言われるとむかつくを通り越してどうでも良くなってしまった。

【むかつく】
「いいよ、むかついても。話相手になってくれる気になった?」
【しょうがないから】
「はは、ありがと。で、ユキナなんで声出なくなったの」

いきなりそこを聞くのか、と溜め息を吐く。でもなんでかわからないが答えたくなった。

【いろいろ、精神的につらい事が重なって気付いたら出なくなった】
「ふうん。ピアノ習ってたの?」
【ううん】
「えー!その才能わけてよ。他になんか楽器出来るの?」
【ギター、ドラム、ベースを少し】
「まじでー?俺バンド組んでて、ベースやってるよ。超楽しいよね、楽器ジャカジャカ鳴らすの」

彼はいきなり立ち上がるとベースを弾くマネをした。とても楽しそうな彼に自然と笑みが零れる。

「ユキナ、なんか今の笑い方すごい格好良かった」

それは褒め言葉?と紙に書くと彼は頷き、最高の褒め言葉のつもりだった、と答えた。再び笑みが零れる。彼はとても元気で正直うるさいと感じたけど、彼の隣は居心地が良かった。

「あ、確かあっちにギターあるからさ、一緒になんか弾こう」

ちょっと待ってて、と言うと彼は準備室に消えた。静かな部屋に時計の音が響く。時計を見ればもうとっくに5時間目の授業が始まっていた。でも戻りたくない。そう思いその場から動かずに居ると彼は前にギターケースを、後ろにベースを持ち、こちらに小走りで来た。なんというか…かわいい。

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あきゅろす。
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