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授業

HRが終わり、数学の先生が教室に入ってきた。椿先生が一言何か言うと笑って頷いた。椿先生は私を見ると不安そうに笑った。

「…であるから、こうなるわけなんだが…えーと、桐原、この問題に答えろ。あ、黒板に書けばいいからな」

ガタガタと椅子を動かして、黒板の前にいき、答えを書く。


「おぉ、正解。みんな、桐原が書いた途中式もちゃんと覚えとけよー。はい、じゃあ次、の問題をー樋口ー!お前解け!」
「…」
「樋口ー!」
「っうわ、はい!」
「おーい…なんでそう毎回寝るのかなぁ。」
「教科書見ると眠くなっちゃうからさー」

クラスのみんなが彼らの会話を聞いて笑っているなか、私は窓の外を見ていた。


―― なんで慧は授業中そんなに眠くなるの?
―― わっかんねぇ。教科書見ると眠くなるんだよ

おっさんみたいに頭を掻きながら欠伸をして私の問いに答える慧。

―― …なんで授業聞いてないのにテスト出来るの?
―― あぁ、図書館で勉強してるから。どうしてもわからないときは先生に聞いてるし。

意外と真面目で頑張り屋な慧。

―― そうなんだ。
―― ナニ、俺と一緒に勉強したいの?

私のこたえを知っていて尚聞いてくる意地悪な慧。

―― うん、頭良くなれそうな気がスル

ふとした拍子に思い出す、慧との日々。



窓の外の灰色の雲はいつの間にか涙を流していて、まるで私の心を現しているようだった。いや、本当はもう何年も涙を流さない私の心は例えるならカラッカラに乾いた砂漠だ。

キーンコーンカーンコーン…

「あー…じゃあ今日はここまでな。桐原、ちょっとついてこい」

ぼーっとしていて最初先生にナニを言われたのかわからなかったが、少し考えて、教科書を閉じて数学の先生の後ろをついていく。
欠伸をかみ殺しながら廊下を歩き、先生の背中を見ながら廊下を歩き、と歩いていたから自分がどこに向かっているのかがわからなかったが。何度目かわからない欠伸をかみ殺すと、急に止まった先生の背中に激突した。

「おお、ごめんな」

そう笑いながら応接室と書かれた部屋の鍵を開ける先生。

「桐原、いきなりだがテストを受けてもらう。ま、テストといっても成績には関係ないから、適当に受けてくれ。前の学校でどこまでやったのか、お前がどこまでわかるのかを知るためのテストだから」

そう言うと裏表にびっしり問題の書かれたプリントを二枚渡してきた。

「時間は15分間な。じゃあ始め」

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あきゅろす。
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