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05

「雪那、入れ」

なんでそんな偉そうに言うんだろうと少しむかついてぶすっとしてると、椿先生は苦笑した。

「うわっ…普通に可愛いなぁー」
「樋口黙れ。はい、今年からここに来た、きり はーら せつ な、だ。中学3年生という、中途半端な転入だが、みんな仲良くしてやってな。…雪那、なんか書けよ」

そう言ってチョークを渡してくる椿先生。なんか書けよと言われても、黒板にはでかでかと書かれた桐原雪那の文字。意外と字、綺麗だなと思いながら、仕方ないから右端に【声がでないので喋れません】と書けば、みんなはざわざわと騒ぎ出した。

「あー…雪那は、声が出ないんだ。ま、仲良くしてやってよ」

椿先生は気まずそうにポンと私の頭を撫でると雪那の席はあそこだから、と窓側の席を指さした。

「椿センセ、なんで桐原さんと親しげ?」
席に着いたと同時に聞こえた声は、教室に入る前に騒いでいた声と同じだった。

「姪、なんだ。雪那は姉さんの娘」
「へぇ。前に話してた溺愛中のオンナかと思った。」
「ははは。彼女はいないって言ってるだろ。さ、出席とるぞー。愛内ー」

何か言いたげな騒がしい彼を無視するように椿先生は出席を取り始めた。

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