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03

車に乗り込んで数時間。もう、見慣れた景色はどこにも見あたらなかった。

「もうすぐ、着くからね。」

彼女の言ったとおり、10分とかからず学校らしきところについた。それなりに綺麗な校舎は、たしか2、3年まえに新しくしたばかりだと聞いた。学校の近くに、学生寮もあり、家が遠い人など、理由がある人は寮からでも通える。ほとんど利用する人は居ないらしいが。

「雪那、行くよー。椿が首を長くして待ってるわ」

そう言う彼女の後ろを黙って歩いた。
職員室、とプレートのある部屋の扉を叩くとガラガラとちょっと危ない音を立てて扉が開いた。

「えっと…」

眼鏡を掛けた先生が出てきた。

「今日転入予定の桐原ですけど、花野椿、いますか?」
「花野先生、ですか…」

そう言うと眼鏡を掛けた先生は大して広くない教員室を見渡した。

「あ…花野先生!転入生の方が見え…まし、た」

眼鏡を掛けた先生が喋り終わる前に椿さんは立ち上がり、椅子をなぎ倒し、足をゴンゴンぶつけながら、気持ち悪いくらいの笑顔でこちらに走ってくる。

「せ、せつなー!」

叫ぶと同時に飛びついてきた彼にギシギシと体中の骨が悲鳴をあげ、涙目になりながらも私は抱きしめ返した。久しぶりなのだ、椿さんに会うのは。でも、そろそろ苦しくなってきた。20センチほど違う身長のため、私の顔が椿さんのがっしりとした胸板に押しつけられているのだから当たり前なのだが。

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あきゅろす。
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