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Aお前の事なら何でも分かる
「さあ!今日も張り切って行こうね!」

「姫君は今日も元気だね。朝からその声を聞くだけでこっちもやる気が湧いてくるよ」

「ありがとう!やる気が湧くなら私も頑張らないとね」

「張り切るのは良いが突っ走り過ぎるなよ」

もう、九郎さんはこっちがやる気だって言うのに水を注すんだから。
わかってますよ。

………あ…

「………………」

将臣くん?
…っ、視線が合っちゃった。
何で此方を見てくるの。

「望美、ちょっといいか?」

怒ってる訳でもない、静かな声なのに…なんか責められてる気がする。

「話があるんだが…いいか」

「い、いいよ!なに?」

答えると皆に向かって「悪いな」って言って私の手を引っ張っていく。

「ちょ!将臣くん」

…仕方がないか。
怒ってる訳じゃないと思うけど、機嫌がいい訳じゃないみたいだし…黙って着いていこう。


「あれ〜、望美ちゃんと将臣くんはどうしたの?」

「…よくわからんが将臣が望美を連れていった」


暫く歩いていると将臣くんが足を止めて、此方を振り向く。

「お前、どうかしたのか?」

「えっ、それはこっちの台詞だよ!急に引っ張って来られたのは私だよ?」

「ああ、そうだな。悪い。…お前さ、元気ないだろ?どうかしたのかと思ってな」

将臣くんの言葉にドキッとする。

「そ、そんな事ないよ!元気だよ」

「…一体何年の付き合いだと思ってるんだよ。見れば空元気だってわかるんだよ。どうしたんだ?」

…………。
やっぱり、将臣くんに隠し事は無理みたいだ。
ヤバい…涙が出てきそう。

「……………っ」

将臣くんが小さく溜め息を吐く。

「一緒に居てやれなくて、ごめんな。俺だって、なるべくお前や譲と一緒に居てやりたいがそう言う訳にも行かないんだ」

「……な、で……」

なんでわかるの?
もう少しで将臣くんと離れなくちゃならない。それが寂しいって。

「お前の事なら、なんだってわかるさ。俺もお前たちと離れるのは寂しい、からな」

将臣くんの言葉に、涙が溢れてくる。

「うっ…う…わかっ…てるの。ごめ、ね」

我が儘な事はわかってるんだ。でも、涙が止まらない。
そうしてると、将臣くんが私を軽く抱き締めてくれる。

「…寂しい想いさせて、ごめんな」

私も将臣くんの背中に手を回す。
…将臣くんの匂いだ。
この匂いを忘れないように顔を埋める。

「…私も、ごめんね」

将臣くんとは離れ離れになっちゃうけど、何度も会ってるんだ。これが最期じゃないよ。また会えるよね。

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