姉ちゃんと俺と3年E組
子猫と傘
《今日から梅雨入りが発表されました。》
朝食を食べながらニュースを見る。
外はザァザァと雨が降って色とりどりの傘が目に入る。
気温はやや高めでじめじめとしている。
こんな日は髪が決まらなくて嫌いだ。
小さく溜息をすると時計を見て慌てて学校へと向った。
______
今日からテストなので午前授業だ。
カリカリとシャーペンの音が響くとチャイムと共にテストは終わった。
4教科が終わりそれぞれ帰って行った。
傘をさして駅前を通りかかろうとすると"にゃー"と弱々しい声が聞こえそちらに歩き出した。
そこには1匹の子猫がおり草陰で震えていた。
『よしよし、こっちおいで』
子猫を呼ぶとゆっくりと近付いて来て、私の手をペロリと舐めた。
私はカバンからハンカチを取り出し、ずぶ濡れになった子猫をわしゃわしゃと拭いた。
『お腹空いたろ?ちょっと待っててね』
そう言うと木の根元に子猫と傘を置き、すぐそこのコンビニへ走った。
動物を飼ったことがない私はとりあえず牛乳と猫缶を買って戻ると、そこには見覚えのある人物がいた。
彼は子猫の下顎を人差し指で撫でており優しい顔をしていた。
『カルマくん…?』
「おー、お姉さん!なに?ずぶ濡れだけど」
雨が降る中傘もささずコンビニ袋を下げた私を見て"あぁ"と子猫にさしてある傘を見て自分の傘を傾ける。
すると私を見上げ"にゃー"と鳴く子猫に買ってきた牛乳と猫缶を与えた。
『ご飯だよーお腹空いたでしょ?』
もぐもぐといきおいよく缶ずめを食べる子猫を私とカルマくんは見つめた。
余程お腹を好かせていたのだろうすぐに食べ終った。
「この猫どーすんの?」
『んー、家で飼いたいけど親が動物嫌いだからな…』
カルマくんは子猫を抱き上げ腹をこちょこちょと撫でている。
私は考えたが親が動物を嫌いなのを思い出し苦笑いをした。
「ふーん、じゃあ俺が預かるよ」
『えっ、本当に?』
「うん、その代わりたまに家に来て遊んであげてよ」
『もちろん!ありがとう、カルマくん!』
子猫の行き先がカルマくん家なら安心だと思った私は、嬉しくてついカルマくんに抱き着いた。
いきなりの事で驚いた顔をするカルマくんに気付き"ごめん!"と行って離れようとするとそのまま抱き締められ耳元で何か言われた。
「お姉さん、無防備すぎ」
『え?何が…?』
「服、透けて見えてるよ」
『なっ!?///』
その言葉で私は彼から離れ自分の姿を確認すると、ずぶ濡れになったYシャツが体に張り付き薄ピンクの下着が見えていた。
慌てて両手で隠すが遅く、カルマくんは自分の着ていたカーディガンを私に被せた。
『あ、ありがと!//』
「いーえ」
『……はくしゅん…』
「あはは、大丈夫?」
『大丈夫!じゃ、じゃあ子猫頼むね!また連絡するからー!』
恥ずかしくなり私は傘を拾ってダッシュで家に向った。
走ってる途中、カルマくんの匂いがふわりと漂い何故かドキドキした。
_________
カルマ視点
学校帰りにたまたま通りかかった駅前で名前を見つけた俺は彼女の後を追った。
そしたら何か草陰でやっているのか近付いてみると名前が傘を置いて走って行った。
そこには子猫がいた。
「ふーん、お前か」
俺はその子猫を抱き上げ名前が来るのを待っていた。
コンビニ袋を下げた彼女はずぶ濡れでしかも下着が透けていたから目のやり場に困ったが知らないフリをした。
そのまま会話が弾み成り行きで俺が引き取る事にしたら、彼女が抱き着いて来るものだから俺は彼女を少し意地悪してやりたくなったので正直に話した。
慌てる名前が可愛くて笑いそうになったが我慢し彼女に自分のカーディガンを渡した。
お礼を言われたかと思うと彼女はくしゃみし、あたふたと帰って行った。
その後ろ姿に笑がこぼれた。
「じゃあ帰るか」
子猫を抱き上げ俺は家へと向かった。
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