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S.A.K.U.R.A.
冬休み


それから秋大会が過ぎ、
肌寒い日々が続いた。
季節は冬、12月も下旬となり
冬休みが始まり野球部の練習が終わる。
監督からの指示で部員は実家に帰るようにと言われた。


私は家がすぐなので
準備などは特に無かった。
貴子や部員の人達に別れの挨拶をする。

『みんな良いお年を!一年間お疲れさまでした!』

そう言って手を降りながら帰る。
一週間と言う短い休みなのだけど
私にはとても長く感じる。
そう、私の家は誰もいない。
寂しいけれど親戚もいない私はどうしょうもないのでいつものように家へと向かった。





「哲、名前知らない?」

「苗字ならさっき帰ったぞ?」

「そう、じゃあまたね」

野球部の仲間に名前の事を聞く
最近ろくに話しをしていないけれど
彼女が通ったであろう道を俺は走っていた。
1回しか行った事が無かったが
記憶力がいい俺は真っ直ぐ彼女の家と向かった。

赤い屋根の大きな家。
彼女しかいない家で一人で新年を過ごす?
それはどれだけ寂しいものか
俺にはわからなかったけれど
彼女を一人にしてはいけないと思った。









『ただいまー』

名前は家へ入ると仏壇に手を合わせた。


『お父さん、お母さん、今日から高校始まって初めての冬休みです。夏休みは毎日部活で忙しかったけど、冬休みはみんな実家に帰るんだって!一週間しかないけどね(笑)』

それは彼女の日課である。
毎日今日あった事を報告するのだ。

TVを付けると初詣や初売りなど
年末年始の番組がやっていた。
それをぼーっと見ていると
小さい女の子が両親に手を惹かれ
初詣に行くシーンだった。
それをただ見ていただけなのに
胸がチクリと痛み気付いたら頬に涙が溢れた。

慌ててティッシュで拭き取るが
次から次へとボロボロと溢れてくる。

『そっか、あの日からまだ2年だもんね。っ…』

両親が無くなって2回目の冬。
その傷はまだ癒えることは無いだろう。
彼女は16歳。
いつも元気で明るくしていたって
それは友達の中での自分。
家にいても明るくしようと頑張る姿は
今にも崩れそうだった。



ピーンポーン


インターホンがなり
ゴシゴシと涙を拭いて受話器を取る。
そこには小湊くんがいた。



ちょっと待っててと言われ俺は息を整える。
彼女の声は少し震えているような気がした。
もしかして泣いてた?
扉を開けまだ制服姿の彼女を見る。
彼女は少し俯いていたが目が赤くなっていたのに気付いた。





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あきゅろす。
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