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S.A.K.U.R.A.



高校最後の冬休み
私と亮介くんは神奈川県の彼の実家へやって来た。
これで3度目の小湊家は去年、一昨年と変わらず私を歓迎してくれた。

「亮ちゃん、名前ちゃん、お帰りなさい」

いつもと変わらずニコニコと笑顔で接してくれるお母さんは嬉しそうに歓迎してくれた。
そして私達より先に着いていた春市くんもお帰りと出迎えてくれた。

『今年もお世話になります』

「いいのよ!名前ちゃんはもう娘みたいなんだから!」

ペコリとお辞儀をするとお母さんは優しい笑顔で答えてくれた。そして、早く荷物置いてきなさい。もうすぐお父さんも帰ってくるわよ。と嬉しそうに笑った。
私達は荷物をおいてリビングに行くとちょうど良くお父さんが帰ってきた。


『お久しぶりです。今年もお世話になります!』

頭を下げ挨拶をすれば、いいんだよと優しく答えてくれた。
それから間もなくして夕食を頂く。
たわいもない話をしながら楽しい食事が終わると亮介くんが口を開いた。

「父さん、母さん、話があるんだけど」

両親がソファーへ座ると私と亮介くんは床に正座する。
春市くんはチラリとこっちを見ていた。

「どうした亮介?」

「卒業したらプロに行こうと思ってさ。最後の試合の時にスカウトされたんだ。」

「亮ちゃん!凄いじゃない!おめでとう!」

「母さん、ありがとう。それで俺決めたんだ。名前と結婚する。必ず幸せにするんだ。」

「亮介、それはまだ早いんじゃないのか?名前ちゃんの御両親にも挨拶しないと」

『それはもう大丈夫です。私の両親はもう他界していて来ないだお墓で挨拶してきました。』

「まぁ、そうだったの…?」

私は過去の話をした。
みんな真剣に聞いてくれてお母さんと春市は涙を流していた。お父さんもそうだったのかと少し考えながら口を開く。

「亮介、幸せにする自信はあるんだな?」

「もちろん、何があっても名前を守り抜くよ。後悔なんか絶対させない。」

そうかと目を瞑り少し考え幸せにしてあげなさい。と優しい声色で話した。
私達は目を見合わせ有難うございます。と深く頭を下げた。
お母さんと春市くんはとても喜んでおり祝福してくれた。

「兄貴おめでとう!今日から俺の姉さんですね!」

「亮ちゃん良かったわね!名前ちゃん、これからも亮ちゃんの事宜しくお願いしますね!」

『有難うございます。お父さん、お母さん、春市くん、本当にありがとうございます…っ』

「クスッ…名前、これからもよろしくね」

私は嬉しさの余り涙が溢れてきた。
みんなが私を歓迎してくれて快く迎えてくれたのだから、本当に嬉しくて仕方がない。
お父さんもお母さんも娘が出来て喜んでいる。
亮介くん頭をポンポンと撫でられると安心したように笑った。




こうして高校最後の冬休みは終わり
卒業までの授業はあっという間に終わった。




_____



「卒業生の入場です。皆さん拍手をお願いします。」


私達は今日青道高校を卒業する。
3年間お世話になった先生や後輩達に最後の方もお別れをする。
私達元野球部はのグランドへ呼ばれ皆で向った。

そこでは1、2年生達が花束を持っており私達卒業生へ一言感謝の気持ちを伝えた。
辛く厳しい部活への記憶を思いだす彼等は涙を流し後輩達に甲子園の夢を託す。
主将の哲くんが後輩へ最後の言葉を伝えると私と亮介くんに近付いて来た。


「亮介、苗字!」

「「「結婚おめでとう!!」」」

『っ!?』

どこから出てきたのか
亮介先輩、名前先輩
結婚おめでとう!
と大きなプレートが出て来た。

1年マネージャーの春乃ちゃんと
2年主将の御幸くんが私達に花束を渡す。

私は驚きと嬉しさのあまりに泣いてしまう。
亮介くんは満足そうにみんなにお礼を言うと私を抱き締め見せ付けるかのようにキスをした。
恥ずかしくなり真っ赤になる私を皆は笑い祝福してくれた。


そして私達は学校の正門をくぐりお世話になった校舎へお辞儀した。
これからそれぞれ違う道を進むが私達、青道高校野球部は永遠に終わらないだろう。


私と亮介くんは手を握り私の家へと向かう。
満開の桜並木が私達の出会いを映し出す。

『私達が出会ったのはここだったね』

「そうだね、あの時俺は名前に一目惚れしたんだよ。」

『!私も亮介くんに一目惚れしたよ。』

「クスッ…これからもよろしくね」

『うん!こちらこそよろしくお願いします!』



私達は真っ直ぐ家へと急ぐ。
長い長い桜並木を歩き
これから先も明るく輝く道を進むのだ。


ザーッと強い風が吹く
桜吹雪が私達の背中を押す。
いつまでもずっと一緒に……










S.A.K.U.R.A. 完

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あきゅろす。
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