S.A.K.U.R.A.
御幸を追い掛けて
今日から新1年生を迎える。
一人ひとり自己紹介が始まると
物置付近で誰かがチラチラと覗いていた。
その後ろに2年生の御幸くんもいた。
遅刻だなと思いながらも監督が見ていないのを見計らい手を降ると、その合図と共に1年生が走り出す。
見つかりませんようにと願っていたら後ろの方で御幸くんが声を上げた。
「あー!こいつ遅刻したのに列に紛れこもうとしてるぞー!」
みんなの視線が1年生へと向くと御幸くんは自分の列に紛れていた。
彼はあたふたと答えるが監督の怒りに触れ、同室の増子くん、倉持くん、そして御幸くんの4人で朝練が終わるまで走らされたのだった。
朝練が終わり着替え教室へ向かう途中亮介くんに声をかけられた。
「名前」
『亮介くん、お疲れ様!』
「ありがと。」
ニコリといつもの笑顔で私に近付き手を握る。
彼の手はとても暖かくて少し大きい。
手を握られるだけでドキドキと胸が高鳴る。
私もギュッと握ると満足そうに笑う。
すると私達の後ろからなんだか声が聞こえた。
「栄純くーんっ!そっちじゃないよ!」
「春っち!こっちだ!」
後ろを振り返れば亮介くんの弟の春市くんと沢村くんがこっちに向かって走ってきた。
「ちょっと、うるさいんだけど」
「あ、いでっ!」
「あっ兄貴っ!」
亮介くんは走ってきた沢村くんの頭にチョップし、沢村くんはびっくりしその場に止まる。
その後春市くんが立ち止まった。
「で、何してるの?」
「御幸…!先輩に話がありましてっ!」
「ふーん。で?」
「文句を言おうと思いまして!追い掛けてきま…した…。」
「ああ、そう。」
黒いオーラを放ちながらニコニコと話している亮介くんに気付いたのか、沢村くんは少し青ざめながら答える。
それに気付いた春市くんは苦笑いしていた。
『御幸くんならもう教室にいるんじゃないかな?』
「!どこですか!?」
『んーっと…2年生だから3階だけど、クラスまではわからないかな…』
「この階じゃないんですか!?」
『うん。ここ3年生の教室しかないよ』
「だから違うったじゃん、栄純くん。」
「春っち!俺は見たんだ!あの眼鏡!」
「だからーっ」
はぁと深い溜め息をつく春市くんに興奮する沢村くん。まだ始まって日が浅いのに仲いいなと二人を眺めていたら、亮介くんが口を開く。
「名前、そろそろ行こう」
『あっ、うん!じゃあね!春市くんと沢村くん!』
亮介くんに手を引かれ歩き出す。
「兄貴、名前さんさよなら!」
「!兄貴って、春っちのお兄さん!?」
「うん。そうだけど…?」
「!じゃあ、あちらの方は?」
「兄貴の彼女の名前さん」
「!と言う事は将来お姉さん!?」
「そうなって欲しいね」
春市くんと沢村くんに手をふろうとすると、後ろの方でそんな会話をしていた。
その後大きな声で挨拶した。
「お兄さん!お姉さん!お疲れ様でしたーっ!」
私は見る見るうちに顔が熱くなり少し俯くと亮介くんが二人に手を挙げ満足そうに笑っていた。
私達はそのまま手を繋ぎ教室へたどり着いたのだ。
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