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どれくらいの月日が経ったのだろう。

ベッドに体を投げ出して、何と無しに荒北は思った。

度重なる行為のせいで感覚のない下半身は、もう自分の体ではないかのような錯覚を覚える。

もやがかった頭で、もしかしたら足は取れてしまったのかもしれない、とおかしなことを思った。


すり、とぺたりとへこんだ腹を、自由になった手でやさしくなでる。

荒北の頭はとっくにおかしくなってしまったのだろう。

手枷は数日前に外され、今荒北をベッドにつなぐのは鎖の伸びる足枷だけだというのに、目隠しを外すことも、ベッドからおりることすらせず、大人しく男を待っているのだから。


目隠しをつけたまま、荒北は腹をそっと抱いてやわらかいシーツに顔を埋めた。

あれほど逃げる隙を窺っていたのが、もうだいぶ昔のことのように感じる。

実際は閉じ込められてからひと月と半分しかたっていなかったけれど、荒北にとってはもう何年もこの部屋にいる気分だった。


光を通さない目隠しのせいで、今が昼か夜かもわからないが、男は決まった時間に訪れるようだった。

腹が減ることも、排泄を我慢することもないから、どこかで見ているのかもしれない。

(ナァんか、もう、どーでもいいっつーか…)

ぐりぐりとシーツに顔をすりつけながら、考える。

あれほど屈辱だと感じていた行為に、何の感情もわかなくなった。

何度も繰り返すうちに体が慣れたのか、身を裂かれる程の痛みを感じることもなくなったし、今では快感ですらある。

男は、執拗に中に出したがったけれど、それさえ我慢すれば、心地良さを感じた。


ベッドに一人転がされ、何も見えず、喋る相手も、暇をつぶす手段すらない。

唯一部屋に訪れる男は、荒北が余程抵抗し口答えしなければ、一切暴力はふるわなかった。

それどころか、男の言うことを聞き、大人しく従えば、いいこ、と言わんばかりに優しく触れてくれる。

荒北を閉じ込め、酷いことをする男だけれど、同時に、この空間で唯一体温を感じられるのも男だけだった。

(これが、誘拐犯を好きになる、なんとかの心理、ってェヤツ?)

なんか名前があった気がするナァ、と考えたけれど、ふやけた頭では考えがまとまらない。


考えるな、と言われた。すべて忘れろ、と言われた。男の言葉は、今の荒北にとって絶対だった。

ぜったい。

まわらない頭に、ふと金色が浮かんだ気がしたけれど、襲い来る眠気には勝てなかった。




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あきゅろす。
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