7*
今日もまた、寝ていたところを叩き起こされて、男の欲望を銜え込まされる。
抵抗しなければ酷いことにはならないと理解してから、荒北はされるがまま体を投げ出した。
それでも何度も中に吐き出されるのが気持ち悪くて、耐えきれずに嫌だと口走っては殴られた。
早く終われと頭をベッドに押さえつけられたまま、耐えていた時だった。
男が、ふと思い出したように、つわりかもな、と言った。
何を言われたのかわからなくて、思わず固まる。
固まった荒北に、男は動きを止めて嬉しそうな声色で、良かったな、赤ちゃんできたぞ、と繰り返した。
目隠しをされたままの荒北に、自分の腹の様子など見えない。拘束された手では、触ることもできない。
ザッと血の気が引いて、ガタガタと体が震える。
逃げなければ、と四つん這いで男から逃げる。震える足は役に立たず、たった数センチ。
荒北が男から逃げることのできた距離は、たったそれだけだった。
腰を掴まれて、抜けかけた男の陰茎を再び押し込まれ、噛み殺せなかった悲鳴が上がる。
意味の分からない単語に、荒北は混乱していた。
つわり?一体何を言っているんだ。
妊娠できるわけがない。赤ちゃんなんて、いるはずがない。
だって、荒北は、男で、
「おんなのこに、なっちまったなァ」
嬉しそうな声色に、荒北は恐怖した。
力の抜けた体をがむしゃらに動かして、ただ逃げなければと、頭にはそれだけだった。
焦れた男に殴られて、滅茶苦茶に突かれても、呂律のまわらない口で、ちがう、と言い続けた。
「ちがわない、荒北は、おんなのこだ」
泣いて喚いて、それでも逃げられずに中に吐き出されて。
ぐったりと荒い息を吐く荒北を仰向けにし、男は腕の拘束を外して、荒北の手を腹にのせた。
ぐちゃぐちゃに濡れた目隠しの下で、荒北は涙で腫れた目を見開いた。
(ァ、ふくらんで、?)
胸元から、下腹部にかけて、男は何度も荒北の手を往復させた。
ぽこりと膨らんだ腹を、手のひらに感じる。
男が何と言おうとも、膨らんでいるはずなんてないと思っていた。男の妄想だと思っていた。なのに、この感触は、何だ?
「おめでとう、荒北。元気な赤ちゃん、産んでくれヨ」
嬉しそうな声、手のひらに感じる感触、吐き気の止まらない体。
嘘だと思いたいのに、男の言葉が、腹のふくらみが、荒北の心を粉々に打ち砕いた。
腹のふくらみが、男の精と陰茎のせいだなんて気付けるほどの正常な思考は、もう荒北には残されていなかった。
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