4*
クッセェ、よくこんな溜めてたな、綺麗にしてやるからな。
面白おかしげな声色で、男は荒北の腹に何度も液をぶち込んだ。
鼻水も涙もよだれも垂れ流して、荒北は声にならない悲鳴を上げながら、耐え続けた。
何度繰り返されただろう。下半身の感覚はもうなくて、体は泥のように動かない。
排泄物の臭いが酷くて、吐き気が止まらない。
自由にならない口で嘔吐くも、奥まで入り込んだ布に邪魔されて苦しさは増すばかりだった。
最後に温かい湯をかけられて、ほっと息をつく。
このまま終わるんじゃないかという希望は、再びベッドに投げられたことですぐに打ち砕かれた。
「ゥウ」
感覚のなくなった尻穴に、男の指が再び入り込んでくる。はじめに突き入れられた時のような痛みは無かったけれど、酷い異物感に涙が止まらなかった。
ぐったりと身を投げ出して、どれくらい時間が経ったのだろう。
「これくらいでいけるか」
何本の指が出し入れされたのか、何時間もいじられていたように感じた尻穴から、ずるりと指が抜かれる。
ぽっかりと開いた穴は、荒北の浅い呼吸に合わせてうごめいていた。
ごくりと男がつばを飲む。
「ほら、荒北、今からおんなのこになるんだから、ちゃんと覚えとけよ」
男が荒北の引き締まった脚を抱え上げる。
ぴたりとあてられた熱を感じて、荒北は最後の抵抗とばかりに弱々しく首を振った。
いやだ。俺は男だ、女じゃない。いやだ。
力の入らない足で、覆い被さってきた男の体を押し返す。けれど男は簡単に足をよけて、荒北の体をうつぶせた。
尻だけを突き出した格好に、人間としての尊厳まで奪われたように感じた。
ぐっと熱が入ってくる。
力が入らない体は、荒北に身を裂かれるような苦痛を与えながらも、すんなりと男の陰茎を受け入れた。
指では届かなかった奥までくわえこまされて、ついに荒北は吐いた。
口枷が胃液を吸い込み、酷い臭いに気が遠くなる。
「あー、脱処女、オメデト」
男が投げつけてくる言葉が心をずたずたに切り裂き、荒北はもう、自分は人間ではなくなったのだと思った。
胃液の饐えた臭いと、部屋に充満した甘い香りと、己が吐き出した精の臭いと。ぐちゃぐちゃに混ざり合って気が遠くなっても、下肢の痛みが荒北を現実へと引き戻す。
男の腰の動きが速くなっていく。埋め込まれた陰茎が、ぶわりと、体内で膨らむのがわかった。
(ヤダ、嫌だ…ッ!)
「―…ッ!」
頭を押さえつけられて腰を掴まれたまま、中にどろりとねばついた精液を吐き出された。
腰を高く上げているせいで、奥の方まで流れ込んでくる。
信じたくなかった。顔もわからない男に犯されて、中に出されるなんて。
ゆるゆると腰を振り、最後の一滴まで出し尽くしたのか男が陰茎を引き抜く。
尻からどろっと漏れ出る男の精液に、我慢できずにまた嘔吐する。
「妊娠したかもナ」
荒北は男だ、子供を作るための子宮なんてない。
けれど。
長い長い時間痛めつけられた荒北の精神は、もう、限界だった。
「荒北と、俺の子供、できたかもなァ」
ぱきんと、心が折れる音が聴こえた。
何度も何度も中に出され、薄い腹がぽっこりと膨らんだ頃、荒北は解放された。
気を失っても叩き起こされ、強制的に喘がされ続けた。
胃液を吸い込んだ口枷は外され、力なく喘ぐ荒北に男はたいそう興奮して何度も酷い言葉を投げつけた。
反論する力なんて、もうどこにも残っていなかった。
ぐったりと意識を飛ばし、やっと与えられた休息に身を任せる。
きっと目が覚めたら、そうしたらいつも通りの日常が始まるはずだ。
当たり前の日常を思い出そうとして、うまく思い描けない自分から目をそらして荒北は眠りに落ちた。
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