4*
口で1回、後ろで2回。
気持ち良すぎて何度か飛ぶかと思った。
金城は獣のように荒北を求めた。
こんな風に、好きな奴を抱くんだナァと快感でもうろうとする頭で考える。
××には、普段のストイックさからは想像できないくらいえっちのときはいやらしいね、とよく言われる。
中に銜え込んでるときは意識が飛んでることが多いから、自分ではよくわからないけれど、こんな筋張った男の体でも金城が興奮したことが、嬉しかった。
金城は何度も何度も、今泉と囁いた。
その度に荒北の心はズタズタに引き裂かれ血を流す。
それでも、今、金城が抱いているのは荒北なのだと思えば耐えられた。
全てが終わり、満足したように眠ってしまった金城の腕から抜け出して、ひとりシャワーを浴びた。
ついでに濡らしたタオルで、金城の体も綺麗に拭った。
ダルい体にむち打って、精液やらの体液で汚れたシーツを洗濯機に放り込み乾燥まで掛けて、行為の形跡を消し去る。
金城は夢を見ていただけだ。
想い人だと思っていたのに、蓋を開けたらチームメイトの男とヤッてしまっただなんて知ったら、気に病むだろう。
責任を取るとでも言いかねない。
付き合いたいという思いはあるし、恋人になれたらどれほど幸せだろうと思う。
それでも、金城が今泉を思って荒北を抱いたのなら、自分はきっと金城の一番にはなれない。
二番目は、嫌だ。
だから、荒北は無かったことにする。
荒北の心だけに残る一夜限りの思い出。それでいい。
十分じゃないか、そう、言い聞かせた。
痕跡を消して力つきた荒北は、美味しそうな匂いに目を覚ました。
寝ぼけてぼんやりする視界で部屋を見回せば、小さなキッチンで金城が何やら作っているようだ。
「ああ、起きたか、おはよう」
「…ハヨ」
二日酔いなんて知らないかのようなさわやかな顔におざなりに挨拶を返して、タオルを片手に風呂場に足を向ける。
荒北の素っ気ない態度を気にすることなく、金城はもうすぐ出来るぞ、と勝手知ったる動きで皿を取り出していた。
狭いワンルームだ、キッチンのすぐ脇のユニットバスのしきりなんてほとんど用をなさない。
それでも扉を閉めて、荒北はその場にへたり込んだ。
良かった。
金城は昨日のことを、覚えていない。
覚えていたのなら、あんなに普通に声をかけてこないだろう。
良かったと安堵する思いは本心のはずなのに、なんで覚えていないんだと心が悲痛に叫ぶ。
矛盾する心に渇いた笑いをこぼして頭から水をかぶった。
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