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荒北には、好きな人がいた。

好きな人には、別の好きな人がいた。


二人は最後のIHの後から付き合い始めて、今は同じ大学に通っている。

卒業式の日打ち明けられ、上手く祝福できたかわからない。

知っていたとは言えなかった。

ずっと好きだったとも、言えなかった。

言えないまま消化しきれない思いは、いまだくすぶったまま、××と肌を重ねて誤摩化し続けている。


福富が好きだった。

やっと過去形になりはじめたところだ。福富と新開が並んで笑い合っていても、友人の顔してからかいに行けるくらいに。


やっかいなのは、心惹かれる人をまた見つけてしまった己の心だ。

しかも好きになった奴は、また別の好きな人がいた。ここまで来るといっそ笑いしか出てこない。

好きになる奴ことごとくが、別の誰かを求めているのだから。

けれど、男同士の何も知らなかった高校時代と違い、荒北はもう男同士での恋愛の仕方を知ってしまった。

それは新開と福富のこともあったし、逢瀬を重ねる××とのこともあった。


きっとあいつは、金城は、荒北を見ない。

唯一無二の親友にはなれても、恋人にはなれない。

それでも一晩限りの夢でもいい、金城の肌を感じてみたいと思った。



何の因果か、いろんな要因が重なりあった偶然の末、その願いは叶うことになる。

シーズン最後のレースで先輩たちが表彰台にのぼり、祝賀会が行われ、その会場が荒北の住むアパートから近かった事。

無礼講だとしこたま飲まされ、自制心が緩んでいた事。

酒が入るとすぐに寝てしまう金城の世話を命じられて、アパートまで連れ帰った事。


そして、荒北の黒髪が、金城の思い人である今泉と同じくらい、伸びていた事。


それらすべてが重なって、金城と荒北は一線を越えた。




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あきゅろす。
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