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ヤスくんって、好きな人いるでしょ。

知ったように笑う××の顔に目を丸くする。

「わかりやすかったァ?」
「なんとなくね。えっちのときはとろとろになってるけど、終わった後ぼんやりしてるし」

えっちて。年いった奴が言ってもかわいくねーとひとしきり笑って、寄せられた体にじゃれつく。

けだるい体を寄せ合って、ぽつりぽつりと会話をする。

好きな人云々は笑い声にまぎれて、すぐに別の話題にうつった。


こうして何でも無いことを話す時間が好きだ。

クンと鼻を鳴らせば、嫌な感じのない、落ち着くニオイ。

もう会うのも何度目だろう。
××の腕にほっとしてしまうくらいには、この男に抱かれてきた。


ハジメテもその次も、その後もずっと××とだけ行為を重ねている。

付き合っているわけじゃない。

セックスだけじゃなくて会って話をするだけのときもある。

年は一回り以上は上だろう。身長は同じくらいか少し上。鍛えているのか、年の割には引き締まっていて少しうらやましい。


初めて行った男同士のそういう場所で、慣れない荒北に男同士のあれこれを一から教えてくれた人。

恋ではない。

それでも腕の中で体温を感じると落ち着く。

トクトクトク。
静かな心音は、子守唄みたいに疲れた体を眠りへと誘った。




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