9
やわらかな声が俺の名を呼ぶ。
平時からそうしていればいいのに、と思いながら返事を返す。
彼が怒るのは大抵俺が原因だ。
わかっていてなお怒らせるのは、彼の表情なら何だって見たいと思うから。
彼の表情はすべて、一人占めしていたかった。
彼の機嫌は、俺の行為でほぼ決まった。
ちゃんと政務をこなせば笑み、逆にサボれば怒る。
それが、うれしいと言ったら、彼はどんな顔をするのだろう。
でも今は、やわらかい声のもとへ急ごう。
きっと、俺にとってもうれしいことが待っているのだろうから。
←→
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!