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ぱちり、と目を開ける。


とても幸せな夢を見ていた気がするが、何も覚えていなかった。

ゆっくりと起き上がり、部屋を見回す。

知らぬ部屋だ。清潔感のある整った部屋。



あの後、誰かに見つかって運ばれたのか。

面倒なことになった。

家主が来る前に出て行ったほうがいいだろう。



何を吹っかけられるか分からないが、善意だけで保護しようなんて考えを持つ人間などいない。


金ならまだいい。昨夜の稼ぎがある。

体でも、まだいい。昨日の今日でつらいが、出来ないことはない。

一番恐ろしいのは、ここに監禁されることだ。

そういった性癖をもった人間がいることを、身に沁みて分かっていたから。



力の入らない足を叱咤して立ち上がる。

鞄は近くに置いてあった。中に学生証と財布が入っていることを確認して肩にかける。


音をたてないようにドアを開け、廊下に出る。

玄関はすぐ近くにあった。


途中にあるドアから数人の男の声が聞こえて背筋が凍った。

昨日の男たちだったらどうしよう。あれだけ好き勝手しておいて、まだ足りなかったのか。


勝手に震え出した体に泣きたくなって、早く逃げなければと気だけが逸る。

玄関のドアに手をかけたとき、ガチャリ、と背後のドアが開いて、声が近くになって。慌てて出ようとしたけれど、間に合わなかった。


肩を掴まれ、無理やり中に戻される。

力の入らない体はいとも簡単に中に投げ出された。


…また、犯されるのだろうか。どうせなら、痛くないといい。

諦めて全身の力を抜く。


声をかけられたが何と言われたのか分からなかった。

抱き起こされてリビングに連れられても抵抗しなかった。


数人の男の足が見える。


酷くされませんように。


唇を噛み締めて叶わぬだろう願いを裡で唱えた。




殻に閉じこもる。ちっぽけな自分を守るために。これ以上酷く傷つかないように。

(これ以上傷がつくものか)

嘲る声に聞こえぬふりをした。




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