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まだ片手で年を数えられる頃、一度だけ、ひどく暴力をふるわれた日があった。


いつも俺など存在しないかのように暮らす母が、俺を見て憎いと言った。

俺は顔の造形は母に似ていたが、青い瞳だけは父譲りだった。


どこにそんな力があったのか、何時間も殴る蹴るの暴力を受け、物を投げつけられ、熱湯をかけられ、このまま死ぬのかと覚悟したころ、母は泣きながら気を失った。

母を追い詰める自分が、憎かった。


その暴力のせいで右目の視力を失っても、これは罰なのだと思った。

生まれてきた、罰。


保健室でもらった眼帯をつけて、目立つ傷にだけ手当てしてもらって、またいつも通りの生活に戻る。




その日から、母の頭から俺の存在はきれいに消えてしまったようだった。



それでも帰る家は、一つしかない。俺を見てもらえなくても、まだ小学生の自分は親の庇護なしでは生きていけないのだ。




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