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好きだ好きだ好きだ。

どうしたらこの想いが伝わるのだろう。

忍者の三禁だとか、そんなのがどこか遠くへ飛んでいってしまったように、この男が愛おしくて想いは募るばかり。

ああこれが色に溺れるということなのかと、辛うじて冷静な頭の一部が告げるが、結局そんなことどっかに追いやられてしまう。


ただ、今一番大事なのは、どうしたらこの腕の中で息を止められるかなのだ。

あんなにも温かかった身体が色を失って、あんなにも喧しかった口がこぼすのはか細い息だけで、あんなにも真っ直ぐに私を射貫いていた目はぼんやりと開かれているだけだ。

私を抱きしめてくれる腕は辛うじてまわされているだけで、私が男の腰に絡めた腕を解いたら、そのまま地面へと倒れてしまうに違いなかった。



どうしてこうなった。

どうしてこうなった?

なあ、返事をしてくれないか。

私を好いていると、誰よりも三禁を頑なに守っていたお前が言ったのだろう。

私を絆して、お前を好きにならせておいて、それで勝手に終いにするつもりか。

お前が一等に好きだと私に言わせないまま、一人私を置いていくのか!


「、とめ」


ああ、ああ、喋るな、もういい。今、今伊作が新野先生を連れてくる。それまで堪えてくれ、すぐに、本当にもうすぐに来るはずだから。

なのに、


「 すき だ 」


笑うな。そんなにやさしげな、愛しいと顔に書いた笑みで、笑わないでくれ。

お前はどうしていつもいつもそうなんだ!

お前が私を好きになる前から、私はお前が好きだった。ずっと目で追っていたこと、お前の一挙一動に心動かされていたこと、お前は知らないのだ。

一度だって言えなかった。惚れたのはお前の方だと、私は付き合ってやってるだけなのだと、ちっとも可愛くない振りばかりで、お前を喜ばせてやれなかった。

なあ、お願いだ文次郎。

せめて私に好きだと言わせてくれ。勝手に一人でいなくならないでくれ。

もう一度、その真っ直ぐな瞳で私を見て、やさしく私の名を呼んでくれないか。

そうしたら私だって、

わたし、だって、




ぱたり。




彼の手が、地に落ちる音が、嫌に響いた。


嘘だ、そう叫んだ気がする。





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