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空は雲ひとつない快晴。空気も澄んでいる。風は穏やか、日差しも強くなく心地いい。

絶好の昼寝日和と、裏裏山まで足を運ぶ。

普段は鍛錬するところだが、今日は特別だ。ここのところ学園中の修補に追われ休む間もなかった。


それもこれも至る所に塹壕やら蛸壺を掘りまくる奴らや、壁に頭をぶつけるいかれた奴がいるせいだ。

もっと予算があれば、もうちょっとはマシな修補ができて、しかも馬鹿力に耐えうる補強ができるというのに、ケチった予算でろくなものが買えるわけがない、会計委員長はわかっちゃいないのだ。

鍛錬馬鹿め、ギンギン鳴いてろ。


ぶつくさと文句を言いながら寝るのに丁度いい木を探す。

地面よりも木の上の方が気持ちがいいし、周りも見渡しやすい。

で、日の当たる絶好のスポットを見つけたのは良かった。


「何でてめえがいんだよ」

「そりゃこっちの台詞だ、留三郎」


木の上には鍛錬馬鹿がいやがった。




別に鍛錬ばk…、もとい潮江文次郎と仲が悪いわけではない。

周りは私たちを犬猿の仲だ、仲良くしたら雨が降るとか言うが、気にくわないから喧嘩をするわけではない。

むしろ自分は淡泊な方だから、興味がない奴はそもそも切り捨てる。

だから文次郎とは喧嘩仲間のようなもので、時には軽口を言い合ったりするし、足りない部分を補い合ったりもするし、…というか皆には隠しているが一応恋仲なのだ。

…だからといって甘い蜜月なんてないが。
(何しろ学園一忍者してる男だ。私と恋仲になるまでも一悶着あった)


で、話を戻すと、昼寝をしようと裏裏山まで足を運び、寝るのに丁度いい木を見つけて、さあ寝るぞと上ろうとしたら既に先客がいて、それが潮江文次郎であったわけだが。

さてどうしようと一寸考える。

引き返してもいいが、折角見つけた場所なのだ。勿体ない。それにもう疲れた。眠い。

というわけで、共寝することにした。




「もっと詰めろよ」

「バカタレ、これ以上どう詰めろってんだ。枝が折れるだろう」

「じゃあ別の所行け」

「後から上ってきたのは手前だろうが!遠慮しやがれ!」

「うるせえよ馬鹿!…ならお前一寸横になれ」

「…こうか?」

「ああ、それでいい…よっと」

「…?!な、何して」

「ち、やっぱ固えな。寝にくい。…ちょ、動くなよ落ちるだろうが」

「う、うるせえ!手前こそ何して…」

「何って…お前を布団にしてるだけだが?」


会話だけでわかりにくいかもしれないので現在の状況を説明すると、先客のいた木の枝に上ってさすがに2人が寝るには厳しかったから、先に文次郎を寝かせて、その上に私が寝てみた。 名付けて文次布団。

頭が湧いているのは致し方ない。とにかく眠いのだ。

文次布団は固くてゴツゴツして生暖かくて寝にくいことこの上なかったが、ドクドクといつもよりも早く刻まれる鼓動は心地よかった。


くあ、と欠伸をこぼす私に、文次郎は諦めたのかため息ひとつついて私の腰に手を回してくる。

落ちたら危ねえだろ。そう呟く文次郎の耳はほんのり紅く染まっていて、柄にもなく可愛い男だと思ってしまった。怒るから言わないが。

文次郎の腰は枝に密着してるため、首に腕をまわして擦り寄ってみる。ビクリと跳ねて面白い。



いい天気だ。
これだけ懇ろになっても雨雲ひとつ見えない。たまには神だか仏だかもいい仕事をする。

ぼんやりとそんなことを考えながら身体の力を抜いて、文次郎に身体を預ける。


トクトクと聞こえる鼓動も、触れたところから感じる熱も文次郎が生きているという証だ。


「なあ文次郎」

「…何だ」

「昼寝もたまにはいいもんだな」

「そうだな」



空は雲ひとつない快晴。空気も澄んでいる。風は穏やか、日差しも強くなく心地いい。 絶好の昼寝日和。

好いた男の熱を感じながら微睡むのも、気持ちがいい。

夢うつつのまま、男の胸に頬をすり寄せて浮かんだ言葉を声にのせた。



(すきだぞばーか)

(俺もだ馬鹿)




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