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先輩命令は絶対だ。
例外は、ない。




あの夜から、半年がたった。あの日の委員長は卒業し、俺は五年生になった。


新しく入った後輩は、まるで雛鳥のように先輩先輩、とついてくる。
荒んだ心が、ほんの少し癒されるようだった。


あの日の先輩は委員長となり、未だ行為を強要されていた。

あの時何もわからなかった行為は、そのあと受けた色の授業で男女の営みだと教わった。
男色のものには自ら仕掛け、情報を引き出すこともあると。


授業を受けたことを知った先輩は、更に無体を強いた。

散々辱められ涙もつき、抵抗にも疲れ従順な犬のように服従する日々。

終わらないのだ。きっとあと一年、男が卒業するまでは決して。


心を空っぽにして時が過ぎるのを待つ。それはこの一年で学んだ術だった。


終わらないと、思っていた。

なのに。


呆気なく幕は下りた。








「先輩が、亡くなった…?」


六年生ともなれば、危険な忍務にもつく。その最中だったらしい。

敵の忍隊に奇襲を掛けられ、命を落としたのだと。


顧問から告げられる言葉を、ただぼんやりと受け止める。実感が湧かないながら、ぽろり、と何かが頬を伝う感触。

「泣きなさい。これからは君が委員会を率いていくのだから」

ああ、自分は泣いているのだ。

もう、涙など枯れてしまったと思っていたのに。


そして目の前のこの男は、自分が悲しみ涙をこぼしているのだと思っている。



先輩が死んだ。

男が死んだ。

自分を苦しめ、辱めた男がいなくなった!


心の底から溢れ出したそれは、まがいもない、歓喜だった。


ただ、可笑しくて仕方がない。

あんなに終わらないと思っていた日々が、呆気なく終わってしまったのだから。


ああ、壊れてしまった、崩れてしまったと心が騒ぐ。


歓びから止まらない滴をそのままに男に縋り付く。



歪な笑みを唇に乗せながら。




(さようなら さようなら、地獄に堕ちて苦しめばいい!)




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