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「やだっ、やめてください!!」
腕を引かれ連れて行かれたのは倉庫の一番奥、入り口から死角になる場所。
危険な火薬が置かれているところで、持ち出されないよう鍵を掛けられているものがほとんどだ。
その床に投げ出され、受け身を取ることすら出来ずに頭を打つ。
くらくらと揺れる視界で、委員長が寄ってきたのがわかった。
変に抵抗して火薬を落としたらただじゃ済まない、そんな恐怖で両手を取られても何もできなかった。
「ああ、兵助はかわいいねぇ」
両手を後ろ手に縛られ、身動きさえ禄に取れない。
されるがまま帯を解かれ、ついに褌まで取られてしまった。何をされるかわからない恐怖に全身が震える。
「白くて、それに細い。ちゃんと食べてる?」
まるでいつもと変わらない委員長が恐ろしかった。
怖くて恐くて、泣いていたらしい。そっと頭を撫でられた。
「何も、恐くないよ。だって私たち、君を愛しているんだから」
「…せん、ぱい?」
「震えてるね、寒い?大丈夫すぐにあったかくしてあげる。彼もそろそろ戻ってくる頃だし。あ、ほら」
「委員長ー、こんなもんでいいすっか?」
突然の乱入者にびくりと身体が跳ねる。現れたのは自分のひとつ上の先輩だった。
持っていた袋を委員長に手渡す。渡された袋の中を確認して、にやりと。そこで初めて委員長の歪んだ笑みを見てしまった。
溢れ出した恐怖に喉が引き攣り、目をこれでもかと見開く。
たすけて と叫んだつもりだった。
けれどそれは、頬の痛みで音にならなかった。
床に半裸で横たわる自分を見下ろす、ふたつの影。かたかたと震えが止まらない。
「兵助、いいこにしていたら、何も恐くないんだよ」
「俺らの言うこと聞いてりゃ、何も痛いこともしねえよ」
嗚呼。
神様がいるのなら助けてと、その時初めて願った。
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